現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は間葉系幹細胞と血管内皮細胞の相互作用を利用しより多くの組織再生をもたらす細胞移植方法の開発、そしてそのメカニズムについて明らかにすることであった。使用する間葉系幹細胞として骨髄由来間葉系幹細胞を培養した。培養については以前からのプロトコールを用いて行い、細胞表面分子の発現をフローサイトメトリーで確認した。その結果、培養幹細胞はCD105, CD73, CD90陽性、CD45, CD34陰性であることが明らかとなった。また、in vitroにおいて骨芽細胞、脂肪細胞様細胞、軟骨細胞様に分化し, それぞれ石灰化結節、脂肪滴、軟骨基質の観察により3つの分化形質への分化能が確認された。一方、血管内皮細胞としてはマウス由来血管内皮細胞株ms-1を用いた。間葉系幹細胞と血管内皮細胞の直接的な相互作用を観察するため、PKH67,PKH26でラベルした細胞を用意し、単層培養したヒト間葉系幹細胞の上へマウス血管内皮細胞を播種したところ、マウス血管内皮細胞は間葉系幹細胞上へ接着した。この時の、各細胞種における遺伝子発現を検討するため、ヒト特異的あるいはマウス特異的なプライマーを設計し、その特異性をPCR法を用いて確認した。確認が取れたプライマーを用いて、骨芽細胞分化マーカーであるALP(ヒト)、血管内皮細胞の分化マーカーであるvWF(マウス)の発現を定量的PCR法を用いて検討したところ、血管内皮細胞との共培養によって骨髄間葉系幹細胞のALPが上昇し、一方、血管内皮細胞におけるvWF遺伝子の発現が上昇した。これらの結果は、骨髄間葉系幹細胞と血管内皮細胞の共培養によって、それぞれの細胞の分化が促進されたと考えられた。この二種類の細胞が直接接触する事でお互いの分化を亢進させることは、移植によって組織再生が増強される可能性を示唆するものと考えられる。
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