研究課題/領域番号 |
18K09572
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉田 典子 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30313547)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周炎 / UCP / 遺伝型 / ミトコンドリア / サイトカイン / ペリオドンタルメディスン |
研究実績の概要 |
脱共役タンパク(Uncoupling protein; UCP)はミトコンドリア内膜に存在し、エネルギーを熱として放散させる機能が知られている。そのうちUCP2は白血球など広汎な細胞・組織に分布し、UCP3は骨格筋、褐色脂肪組織、胸腺、脾臓に分布する。従来、UCP遺伝子多型と糖尿病、肥満、骨粗鬆症との関連性が報告されていた。一方、歯周炎とこれらの全身疾患との関連性が示唆されている。我々はこれまでに、閉経後女性における横断研究にてUCP2とUCP3遺伝子多型と重度歯周炎が有意に関連することを報告した。また、マクロファージ様細胞を歯周病原細菌由来の成分で刺激する細胞実験にてUCP2がサイトカインや活性酸素産生の産生を抑制することを示した。しかし横断研究では対象者中に糖尿病、肥満、骨粗鬆症の有病者が少なかったため、歯周炎とこれらの疾患との関連性およびUCP遺伝子多型の影響を解析することができなかった。 そこで本研究では、総合病院外来患者である成人男女を対象として、歯周炎、糖尿病、骨粗鬆症と、UCP遺伝子多型との関連性を解析するとともに、細胞実験または動物実験にて歯周炎におけるUCP2およびUCP3の役割を解析することを目的とした。 令和2年度においては、新潟県佐渡市佐渡総合病院の外来患者を対象としたコホート研究であるPROST(Project in Sado for Total health)の一部としてUCP遺伝型関連解析研究を実施するため、PROSTにおける歯周検査結果、医学データ、参加者へのアンケート結果および採取済みのDNAおよび血清サンプルを使用する許可をプロジェクト管理者より得て、研究計画について新潟大学遺伝子倫理委員会の承認を得た。現在までにPROST参加者246例についてDNA分注とデータベース作成を終えてUCP遺伝型タイピングの外部委託を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
佐渡総合病院外来患者である成人男女を対象としたUCP遺伝型と疾患関連解析研究については、これまでに3000名以上の参加者が登録されており、既存の医学データ、アンケート結果のデータベースおよびゲノムDNAと血清サンプルが存在しているが、歯周病検査結果を得られたケースは、これまでのところ246例に留まっている。しかし遺伝子倫理委員会の承認を得て、これら246例に関しては、既にDNAの分注を終えており、間もなくUCP遺伝型タイピングを開始するところである。それと平行して歯周病検査について当初目標の300例を目指し、引き続き例数を追加しているところであるが、COVID-19の影響により歯科受診者数および歯周病検査実施機会が減少した状態が続いているため、追加ペースは研究開始時の予測より遅くなっている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験より得られた歯周炎におけるUCP機能解明の成果を、国際学術雑誌に掲載すべく論文作成中である。また、総合病院外来患者である成人男女を対象としたUCP遺伝型と歯周炎・糖尿病・肥満・骨粗鬆症等疾患関連解析研究については、間もなくUCP遺伝型タイピングを開始できる見込みであり、今年中にタイピング結果を得て、既存の医学データおよびアンケート結果、歯周病検査結果とともに多変量解析を行う。また追加の歯周病検査結果が集まり次第、UCP遺伝型タイピングの例数追加を行ってあらためて全例で統計解析する。これらの成果を、以前に閉経後女性集団で得ていた遺伝型解析研究結果と総合して考察し、論文にまとめて国際学術雑誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
総合病院外来患者である成人男女を対象としたUCP遺伝型と歯周炎・糖尿病・肥満・骨粗鬆症の関連解析研究に関して、遺伝子倫理委員会による承認を得るために予想よりも時日を要したことに加えて、COVID-19の影響により、歯周病検査結果を得られた対象者数が思うように集まらなかった。そのためUCP遺伝型タイピングを外部依託する費用が未使用であった。しかしゲノムDNAは以前から保管のものを使用する予定であり、医学データおよびアンケート結果のデータベースは既存であり、現在は、倫理委員会の承認も得られている。また歯周病検査結果を得た対象者数についても、当初の目標には達していないが統計解析可能な例数となっているため、今後直ちにUCP遺伝型タイピングを行う。 次年度使用となった助成金は、上記遺伝型タイピング費用および論文投稿料として使用予定である。
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