脱共役タンパク(Uncoupling protein: UCP)はミトコンドリアの内膜に存在しエネルギーを熱として放散させる機能が知られている。そのうちUCP2は白血球など広汎な細胞・組織に分布し、UCP3は骨格筋、褐色脂肪組織、胸腺、脾臓に分布する。従来、UCP遺伝子多型と糖尿病、肥満との関連性が報告されてきた。一方、これらの全身疾患と歯周炎との関連性が示唆されている。我々はこれまでに、閉経後女性における横断研究にて、UCP2とUCP3の遺伝子多型と重度歯周炎が有意に関連することを報告した。また、マクロファージ様細胞を歯周病原細菌由来の成分で刺激する細胞実験にて、UCP2がサイトカイン産生や活性酸素産生を抑制することを示した。しかしこの横断研究では対象者中に有病者が少なかったため、歯周炎とこれらの疾患との関連性およびUCP遺伝子多型の影響を解析することができなかった。 そこで本研究では、総合病院外来患者である成人男女を対象として歯周炎、糖尿病、肥満とUCP遺伝子多型との関連性を解析した。 新潟県佐渡市佐渡総合病院の外来患者を対象としたコホート研究であるPROST(Project in Sado for Total health)の一部としてUCP遺伝型関連解析研究を実施するため、PROSTにおける歯周病検査結果、医科データ、参加者へのアンケート結果、血液から抽出したDNAおよび血清サンプルを用いた。欠測値のあるケースを除いて最終的に215名の対象者のデータにつき統計解析を行った。UCP2遺伝型間で年齢や歯数の有意差は認められなかった。年齢、糖尿病、肥満、喫煙で調整した多変量解析の結果、UCP2の遺伝子多型rs659366と重度歯周炎との間に有意な関連性が認められた(Odds比 2.5)。この成果を2022年6月に開催される国際学会EuroPerio10で発表予定である。
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