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2019 年度 実施状況報告書

細菌感染による死細胞を認識する自然免疫受容体Mincleの歯髄における役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K09577
研究機関徳島大学

研究代表者

湯本 浩通  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (60284303)

研究分担者 平尾 功治  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (00581399) [辞退]
木戸 淳一  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (10195315)
稲垣 裕司  徳島大学, 病院, 講師 (50380019)
二宮 雅美  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (10291494)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードMincle / 自然免疫 / 細菌感染 / 歯髄 / 象牙芽細胞 / シグナル伝達経路
研究実績の概要

1. 自然免疫機構に関与するレセプターの1つであるNucleotide-binding Oligomerization Domain protein (NOD)-1の特異的LigandであるD-glutamyl-meso-diaminopimelic acid (iE-DAP)の刺激によりラット象牙芽細胞様細胞(KN-3)に発現誘導されたMincleは、p38 MAPKならびにAP-1特異的阻害剤により、そのmRNA 発現は抑制されたが、ERK1/2、SAP/JNKやNF-kB特異的阻害剤では抑制されなかった。
2. Recombinant Streptococcus HLP (Histone-Like DNA Binding Protein) (rS-HLP)刺激によりヒト単球系細胞(THP-1細胞)におけるMincle mRNA発現誘導は、PI3K-Akt特異的阻害剤により抑制されたが、ERK1/2、P38 MAPKやSAP/JNKの特異的阻害剤では抑制されなかった。さらに、rS-HLP刺激により、THP-1細胞でのAktのリン酸化の亢進認められた。また、rS-HLP刺激によるTHP-1細胞におけるMincle蛋白の産生増強は、免疫蛍光染色による観察でも確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. 自然免疫機構に関与するレセプターの1つであるNOD-1の特異的Ligand (iE-DAP)で刺激されたラット象牙芽細胞様細胞株では、p38 MAPK-AP-1シグナル伝達系が活性化されて、Mincleの発現と産生が増強されたことから、細菌感染防御において歯髄組織の最前線に位置する象牙芽細胞において、Mincleは、歯髄炎の病態・発症に関与している可能性が示された。
2. rS-HLP刺激されたTHP-1細胞におけるMincleの発現増強は、PI3K-Akt経路によって制御されていることが明らかとなり、歯髄炎の進行はMincleを介して急速に進行する可能性があること、またMincle発現をPI3K-Akt阻害剤によって抑制することで、Mincleによって産生される炎症性サイトカインを減少させ、歯髄炎の進行を防止できる可能性を示唆された。
当初の研究実施計画と以上の結果を考慮すると、おおむね順調に研究は進展していると評価される。

今後の研究の推進方策

1. iE-DAPやrS-HLP刺激により歯髄構成細胞(象牙芽細胞や単球)において発現増強されたMincleの機能解析を行う。すなわち、iE-DAPやrS-HLP刺激後に、Mincle特異的Ligandであるtrehalose dimycolate (TDM) で2次刺激した歯髄構成細胞における遺伝子発現量やタンパク質産生量の変化について、PCR array、real-time PCRやMultiplex beads array、ELISA等を用いて網羅的かつ継時的に解析を行う。
2. 抗炎症・抗菌ならびに抗酸化作用を有するPolyphenols (CatechinやCaffeic acid phenetyl ester等)の歯髄構成細胞におけるMincle発現やそのシグナル伝達機構に対する影響について解析を行い、臨床応用への可能性について検討する。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、これまでに購入・使用していた培地や試薬類に加えて、Total RNA抽出・精製Kitやreal-time PCR試薬等が十分に残っていたために、それらの新規購入が計画当初より少なく、研究費の繰り越しが生じた。また、Mincle発現誘導機構の解明、すなわちシグナル伝達経路の解析を重点的に行った事からも研究費の繰り越しが生じた。
(使用計画)
次年度は最終年度でもあり本研究課題の集大成となることから、象牙芽細胞や単球において発現誘導されたMincleの機能解析について、網羅的かつ経時的遺伝子発現とタンパク質産生の解析し、さらに、Polyphenol類による歯髄構成細胞のMincle発現やそのシグナル伝達機構への影響を解析する研究へ移行する為に、PCR array、ELISA kitや各シグナル分子特異的抗体の購入等に、この繰り越し分と次年度の研究費を使用する計画である。さらに、次年度も継続して、臨床サンプルとして智歯や便宜抜髄さらには不可逆性歯髄炎にて抜髄となった歯髄組織を用いてMincleの発現解析を行う為の試薬が必要である。また、学会や論文での研究成果発表を今年度より多く行う予定であり、これらの事項にも繰り越し分と次年度の研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Caffeic acid phenethyl ester (CAPE) induces VEGF expression and production in rat odontoblastic cells2019

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Kuramoto, Kouji Hirao, Hiromichi Yumoto, Yuki Hosokawa, Tadashi Nakanishi, Daisuke Takegawa, Ayako Washio, Chiaki Kitamura, Takashi Matsuo
    • 雑誌名

      BioMed Research International

      巻: 5390720 ページ: 1-12

    • DOI

      doi: 10.1155/2019/5390720

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Pathogenic Factors from Oral Streptococci for Systemic Diseases2019

    • 著者名/発表者名
      Hiromichi Yumoto, Katsuhiko Hirota, Kouji Hirao, Masami Ninomiya, Keiji Murakami, Hideki Fujii, Yoichiro Miyake
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 20 ページ: 1-18

    • DOI

      doi: 10.3390/ijms20184571

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Clinical Technique in Endodontics2019

    • 著者名/発表者名
      Hiromichi Yumoto
    • 学会等名
      ConsAsia2019 (The 1st General Meeting of the Asian-Oceanian Federation of Conservative Dentistry [AOFCD])
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ラット象牙芽細胞(KN-3)におけるVEGFの石灰化誘導作用2019

    • 著者名/発表者名
      蔵本瞳, 平尾功治, 細川由樹, 武川大輔, 湯本浩通, 中西正
    • 学会等名
      日本歯科保存学会 2019年度秋季学術大会(第151回)
  • [学会発表] 萌出後マウス臼歯の歯髄における象牙質形成関連因子の発現解析2019

    • 著者名/発表者名
      神尾強司, 守田剛, 角田佳折, 湯本浩通, 馬場麻人
    • 学会等名
      第61回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] NODリガンド刺激したヒト象牙芽細胞様細胞におけるインターフェロンガンマの影響2019

    • 著者名/発表者名
      武川大輔, 中西正, 平尾功治, 湯本浩通, 細川由樹, 蔵本瞳, 松尾敬志
    • 学会等名
      日本歯科保存学会 2019年度春季学術大会(第150回)
  • [学会発表] Caffeic Acid Phenetyl Ester (CAPE)のラット象牙芽細胞(KN-3)におけるVEGF産生誘導機序の解析2019

    • 著者名/発表者名
      蔵本瞳, 湯本浩通, 平尾功治, 細川由樹, 松尾敬志
    • 学会等名
      第40回日本歯内療法学会学術大会& 第17回日韓合同歯内療法学会学術大会

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公開日: 2021-01-27  

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