研究課題/領域番号 |
18K09579
|
研究機関 | 千葉県立保健医療大学 |
研究代表者 |
荒川 真 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (60379881)
|
研究分担者 |
金子 潤 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (40301890)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カリエス / 味覚 / リスク判定法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「味覚の敏感さを利用した、簡便で侵襲性も低いカリエスリスク判定法」の実現可能性を検証することにある。ショ糖は「う蝕発生に最も影響を及ぼす食物」と考えられており、これを頻回もしくは多量に摂取するとカリエスリスクが高まることは衆知の事実である。しかしながら「その摂取量や頻度はどう決定されているのか?」という点に関しては未だ不明な点が多い。実は先天的な味覚の敏感さが摂食行動に影響している事は以前から報告されていた(例:味覚の敏感な子供は、味の濃い食べ物を好まない、等)。また、近年では苦味や甘味に鈍感な子供は、ショ糖の摂取回数および頻度が高く、結果的にカリエスリスクが高まる可能性があることが報告されている。このような背景から、「味覚に対する敏感さを調べることにより、カリエスリスクを判定する」可能性を検証する。 まずは研究対象者を「PROP test」という方法により、「Super-taster」(=味覚がとても敏感な人)、「Medium-taster」(=同じく中程度の人)および「Non-taster」(=敏感ではない人)の3群に区分する。その上で、各群における研究対象者のう蝕歯数およびDMFT指数をカウントした。得られた結果は統計学的検討を行った。 現時点における各群の存在比率はそれぞれSuper-taster:約16 %、Medium-taster:約39 %、Non-taster:約45 %であった。 また、平均う蝕歯数はSuper-taster群、Medium-taster群、Non-taster群の順に多くなる傾向がみられた。 すなわち、「味覚がとても敏感」である群ではう蝕が少なく、敏感でなくなるにつれ、う蝕が増加する可能性が確認された。ただし、現時点ではまだ予定サンプル数に達していない。ゆえに、次年度においても検証の継続が必要と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始に先立ち、学内研究倫理審査委員会への研究申請を行い、承認を得たが、約3ヶ月を要した。平成30年度の当初計画は以下の通りであった。 《(1).学内疫学研究倫理審査委員会への研究申請》(担当:荒川)《(2). 研究対象者への研究協力依頼ならびに臨床診査。なお、目標症例数は100 例とした。 調査方法:まず最初に、「Super-taster」(=味覚がとても敏感な人)、「Medium-taster」(=同じく中程度の人)および「Non-taster」(味覚が敏感な人(Taster) と敏感ではない人(Non-taster) を区分し、各々の存在比率を調べる。その上で、両者間における以下の違いを調べる。① DMFT/dmf ② 飲食回数甘味の摂取頻度(食生活に関する問診表に対し、回答を得る) ③ 唾液中におけるS.Mutans レベル ④ 全身疾患 ⑤ プラークインデックス(PII) ⑥ フッ化物利用状況 ⑦唾液分泌能および緩衝能。同時にカリエスリスク判定ソフト”Cariogram”を利用して、将来的なう蝕発生の可能性を算出する(担当:荒川、金子)。 《(3).データの解析》得られたデータは個人名を匿名化したのちに、統計解析する(担当:金子)。 (1).については、上述の通り約3ヶ月を要したものの承認を得た。(2).については、研究対象者への研究協力依頼を行った。その結果、現時点で約四十数名から研究協力への快諾を得ることができた。また初年度の臨床審査を既に済ませた。(3).については、現時点ではまだ予定サンプル数に達していないため、最終結果は未定である。
|
今後の研究の推進方策 |
【平成31 年度以降】 《①前年度の総括》平成30年度の研究成果を総括し、診査調査手法等に問題点があれば改善する。《②前年度結果との比較》本研究の対象被験者には、継続して口腔内の管理にあたることが可能な者を想定している。ゆえに、研究開始時点より1年後(=平成31年度)および2年後(=平成32年度)における追跡を行う。また、前年度にCariogramにて算出したう蝕発生の可能性と、現実のう蝕発生率を比較、検討する(担当:荒川、金子)。 《③研究の継続》引き続き目標症例数に達するまで研究を継続する。《④味覚の敏感さを利用した新たなカリエスリスク判定法の実現に関する最終報告書の作成》学会発表および論文発表を行う(担当:荒川、金子)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費および旅費については本学の「学内個人研究費」を充てることが可能であったため。
|