研究課題/領域番号 |
18K09582
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中山 洋平 日本大学, 松戸歯学部, 専任講師 (30434088)
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研究分担者 |
小方 頼昌 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (90204065)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯肉接合上皮 / アメロチン / 歯周組織 / 細胞間相互作用 / 液性因子 |
研究実績の概要 |
さまざまな生体の反応の中で,歯肉接合上皮におけるアメロチン(AMTN)遺伝子の発現が変化することを明らかにし,そのメカニズムを解明するため研究を継続している。まず,炎症,創傷治癒および腫瘍に関連した上皮間葉移行(EMT)に着目した研究についてまとめ,今回のプロジェクトの前段階として論文投稿した。 トランスフォーミング増殖因子β1(TGFβ1)は,上皮細胞のアポトーシスにも関連するが,EMTにおいても重要な役割がある。TGFβ1はEMT時に,SNAI2やZebを主とした転写因子を誘導し,それらが標的遺伝子のプロモーター領域に結合し,その遺伝子の転写を調節することが知られている。マウスAMTN遺伝子プロモーター領域には,SNAI2結合コンセンサス配列が存在し,TGFβ1誘導EMT時におけるAMTN遺伝子発現の変化を調べた。その結果,TGFβ1に発現が増強されたAMTN遺伝子が,SNAI2によるネガティブフィードバックをうけることを明らかにした。 次に,歯周組織構成細胞の相互作用によるAMTN遺伝子発現の変化を検索するために,以前から使用していたマウス歯肉上皮細胞(GE1細胞)を使用する予定であったが,マウスの歯根膜細胞および歯根膜細胞の入手が困難であったため,ヒトの歯肉上皮細胞(TIGKs hTERT),セメント芽細胞および歯根膜細胞の培養から始めた。ヒト歯根膜細胞(HPL hTERT)およびヒトセメント芽細胞(HCEM hTERT)は,広島大学,高田先生,北川先生のご厚意で頂いた。TIGKs hTERTにも以前から使用していたGE1細胞と同じ変化が生じるかを確認するために,TIGKs hTERTにTGFβ1を経時的に作用させて,AMTN遺伝子発現の変化を検索した。その結果,GE1同様に,AMTN遺伝子発現がTGFβ1によって増加し,本研究に使用できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,NICO1細胞培養システムを使用した。これは,左右に独立したAおよびB wellを任意のタイミングで接続し,共培養による相互作用時間も決定できる。3種の細胞の組合せ①TIGKs hTERT - TIGKs hTERT(コントロール),②TIGKs hTERT - HCEM hTERTおよび③TIGKs hTERT - HPL hTERTによる共培養を行った。まず,TIGKs hTERTを①のAおよびB wellと②,③のA wellに播種して培養を始め,その2日後から②のB wellにHCEM hTERT,③のB wellにHPL hTERTを播種した。細胞が約70%コンフルエントになった後,AおよびB wellを接続し,DCBM培地で培養を24時間および48時間行った。細胞を回収した後,ISOGENでRNAを抽出した。 Primerには接合上皮特異的遺伝子であるAMTNなどを使用し,①②③のA wellで培養したTIGKs hTERTから抽出したRNAからcDNAを合成し,Real-time PCRに使用した。実験は各プライマーを使用して3回行った。 研究自体はおおむね順調であるが,本システムの1wellあたりの面積は直径11mmであり,抽出後のRNA濃度が不充分であることから,2ー3 wellを集めた細胞を1サンプルとした。そのため,本システムを購入する費用が予想よりもかかったこと,歯肉上皮細胞の増殖が遅いこと,歯肉上皮培養に費用がかかることなどが,進捗がやや遅い要因の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
細胞間相互作用にて産生された液性因子を網羅的に解析するために,液体クロマトグラフィー解析(LC-MS解析)を行う。①②および③の細胞の組合せが異なる3種の培地をサンプルとして解析する。 ①と比較して,②③で変化のあった化合物のリストを作成する。その中でも細胞分化やそれぞれの細胞に特異的な遺伝子の調節に関わる可能性が高いものを標的とし,その標的遺伝子のsiRNAを使用し,AMTNを主として歯肉接合上皮特異的遺伝子への影響を分析する予定である。 液性因子の分子量の大きさの違いによって,細胞間相互作用に関わるものをある程度ふるいにかけることはできる。すなわち,NICO1システムの結合部位に,2種類のフィルターを使用して比較することで,LC-MS解析の結果をサポートする出来ると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
歯肉上皮細胞の培養に必要な培地と,それに添加するキットは,実験が少し遅れていたため,すでに購入済みのものを使用することで賄え,次年度使用額が生じた。 今年度は,その差額を引き続き必要な歯肉上皮細胞の培養薬剤に使用していく予定である。
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