研究課題
歯肉接合上皮(JE)は,歯肉上皮が歯面と接着している部分で,口腔内細菌および細菌から産生される起炎物質に対する物理的バリアーの側面をもつが,外刺激や発生段階での分子メカニズムの詳細は知られていない。炎症,アポトーシスおよび上皮間葉移行(EMT)といった現象における歯肉接合上皮の変化に関わる遺伝子群の候補として,Amtn遺伝子を選択し,歯肉上皮細胞におけるAmtn遺伝子発現の変化とその転写調節機構を解析した。マウス歯肉上皮細胞(GE1細胞)におけるトランスフォーミング成長因子(TGFβ1)誘導Amtn mRNA量の増加は,遅延して発現してくるアポトーシス誘導因子であるBaxにて負の調節を受けることを報告した。また,TGFβ1誘導EMT下において,Amtn mRNA量は増加するが,遅延して発現してくるSNAI2によって負の調節を受けることを報告した。これらの解析にはReal-time PCR,マウスAmtn遺伝子プロモーター配列を含むプラスミドを使用したルシフェラーゼアッセイ,核内タンパク質とプロモーター領域の結合を解析するゲルシフトアッセイおよびクロマチン免疫沈降法を用いた。タンパク質の発現量の変化はウエスタンブロットおよび免疫染色法で観察した。JEの発生と歯牙萌出後のJEの構造的維持において,近接する他の歯周組織からの調節機構を想定し,セメント芽細胞(HCEM)および歯根膜線維芽細胞(HPL)と歯肉上皮細胞の共培養システムを用いて,JE特異的遺伝子の発現変化を検索した。共培養中の液性因子成分の違いを液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)で解析した。その結果,ヒト歯肉上皮細胞(TIGKs-hTERT)中のAMTNは,HCEMおよびHPLと共培養によって発現が減少し,Amtn 遺伝子抑制作用としてヒポキサンチン関連,促進作用としてヒスチジン関連因子が候補として検索された。
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Odontology
巻: 109 ページ: 403-410
10.1007/s10266-020-00483-2
巻: 108 ページ: 532-544