研究実績の概要 |
低出力レーザー(LLL)照射による不死化ヒト線維芽細胞(HGF)と不死化ヒト歯肉上皮細胞(HGK)の遺伝子発現への影響を検討した。 (1)HGFへの影響:細胞増殖能より、Nd:YAGレーザーを100mJ/5pps(0.5W)で30秒間照射した。LLL照射1,3,6,12時間後の遺伝子発現変化ついてマイクロアレイデータから機能解析を行ったところ、照射6,12時間後で多くの遺伝子の発現変動が認められた。それらの遺伝子の機能解析を行うとBiological Processの'defense response (DR)'に関与するものが多数含まれていた。Protein-Protein Interactionからは、'DR'に関与するCXCL8,NFKB1,NFKB1A,STAT1は、他の'DR'に関与する遺伝子の反応をつなぐ重要な役割を果たす遺伝子である。CXCL8,NFKB1,NFKB1A,STAT1については、HGF以外の線維芽細胞についてqRT-PCRで検証を行ったところ、HGFのマイクロアレイデータと同様の発現変動傾向が認められ、本研究で用いた線維芽細胞においては、その種類に関わらず、'DR'において重要な役割をなすCXCL8,NFKB1,NFKB1A,STAT1は同様の発現傾向を示すことが明らかになった。 (2)HGKへの影響:細胞増殖能より、Nd:YAGレーザーを100mJ/30ppsで10秒間照射した。LLL照射1,3,6,12,24後の創傷治癒関連遺伝子であるEGF,EGFR,TGF-α,HB-EGFの経時的発現について比較検討を行った。照射1時間後では、EGFRとTGF-αで有意な発現減少が、照射6時間後では、EGFRとTGF-αで有意な発現増加が認められた。このことから、ヒト歯肉上皮細胞においてもLLL照射による創傷治癒促進への関与が示唆された。
|