研究課題/領域番号 |
18K09586
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
小牧 基浩 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (30401368)
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研究分担者 |
児玉 利朗 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20170269)
平嶺 浩子 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (30386841)
山海 直 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (80300937)
鎌田 要平 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 助教 (80385070)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サル / 歯周炎 / 歯垢細菌 / 加齢 / エクソソーム / microRNA |
研究実績の概要 |
歯周炎は歯の喪失原因であり、口腔機能の低下や糖尿病、心臓血管疾患を増悪させ健康寿命を短縮させる。超高齢化社会を迎えた我が国において、健康寿命の延伸と、持続可能な社会保障が求められる。我が国において高い有病状況を示す歯周炎の未病対策が必要である。本研究では、歯周炎の発症前の生体変化を検出可能な新たな診断方法の確立を目指し、申請期間においてはまず同一環境、同一飼料で飼育されているカニクイザルにおける1)年齢と歯周炎重症度の関連を明らかにすること、2)歯周炎罹患サルにおける病原細菌の特定ならびに分離菌株の病原因子、伝播経路を明らかにすることを目的とした。 1)被験個体数が同一飼育環境にあるサルを、Young群(5-9歳)、Middle群(10-19歳)、Old群(20-32歳)の3群に分け、Plaque Index (PlI), Gingival Index (GI), Probing pocket depth (PPD), Bleeding on probing (BOP)、歯垢を採取し、Porphyromonas macacae (P. macacae)に対するPCR検査を行った。初年度調査では年齢別飼育個体数に偏りがでたため、各群における統計学的解析に必要な個体数を確保し、各群における被験個体数を調整した。PlI, PPD, BOPは年齢が高い群において高値を示し、すべての群間で有意差が認められた。GIについてOld群はYoung群、Middle群に対して有意に高値を示した。Porphyromonas macacae (P. macacae)の検出率(PCR検査陽性個体数/被験個体数)は、Young群、Middle群で約40%で、Old群では100%であった。 2)Porphyromonas macacae (P. macacae)はラット実験的歯周炎モデルを用いたマイクロCT解析において明らかな歯槽骨吸収が認められた。歯垢細菌をBHI血液寒天培地とPorphyromonas 選択培地であるKVLB培地を用いて分離し、総菌数に対する黒色色素産生嫌気性桿菌(BPAR)の割合を算出した。歯垢細菌の総菌数は、全群で同程度であった。BPARは、Young群に比してOld群では5倍高値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、群間での被験個体数に偏りがあったが、今年度各群における統計学的解析可能被験個体数を確保することができた。1980年、Drs. Slots とGencoによりサル歯周ポケットからPorphyromonas macacae (P. macacae)が検出されたことが報告されていたが、我々は本研究対象施設内での同一飼育環境においても同菌が個体より検出されること、その割合は高齢で多く、概ね全頭に及ぶことを確認した。このように概ね研究は順調に進展している。本研究では、最終的には歯周炎サルと健全サルとで血中エクソソーム内microRNAの比較を予定しているが、黒色色素産生嫌気性桿菌(BPAR)の割合に注目し個体を分け、検査を行うことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
同一施設内、同一飼育環境下にあるサルの歯周炎検査を行い、年齢と歯周炎罹患との間に相関があることを明らかにした。ヒトを対象とした研究では、環境因子のばらつきが大きく、歯周炎発症に伴う微細変化を捉えることは困難であった。本研究では、最終的には歯周炎サルと健全サルとで血中エクソソーム内microRNAの比較を行うことで歯周炎発症に関連して変動する因子の検索を予定しているが、本年度新たに明らかにした年齢と黒色色素産生嫌気性桿菌(BPAR)の割合に注目し、BPAR感染後の個体における微細変化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染の影響により研究成果を国内外の学会にて発表予定であったがこれを中止または延期した。また、当該年度の研究成果より当初の実験計画を高効率な計画に変更したが、実験計画変更後の動物実験も新型コロナウイルス感染の影響により中止を余儀なくされたため次年度使用額が生じた。最終年度は、新型コロナウイルス感染の影響から脱し、通常業務に戻り次第計画を遂行予定である。
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