研究実績の概要 |
本研究は、外来刺激にさらされた歯髄・象牙質複合体の防御反応である修復象牙質形成におけるプロテアーゼを起点とした機序を解明することで、歯髄保存療法へ応用することを目的としている。 申請者はこれまでの研究から、①健全歯と比較して齲蝕歯において象牙芽細胞様細胞および修復象牙質にbone morphogenetic protein (BMP) -1の発現が亢進すること、②BMP-1がヒト歯髄培養細胞の糖鎖プロファイリングの変化(グライコームシフト)をもたらすこと、③なかでもα2,6-linked sialic acid (α2,6-sia) 修飾が有意に減少することを見出している。 前年度に実施した液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析 (LC-MS/MS)の結果からα2,6-sia修飾されるタンパク質が6つ同定された。また、その中でglucosylceramidase(GCase)の可溶/不溶性画分における比率がBMP-1の存在下で変化することを確認していた。 続けて本年度は、可溶性の変化がGCaseの細胞内局在に影響を及ぼすと仮定し共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析を行ったところ、BMP-1存在下でGCaseが核へ集積することを確認した。また、核画分と細胞質画分をwestern blottingにて解析したところ、BMP-1存在下で核画分のGCaseが増加することを確認した。さらに、BMP-1阻害剤であるUK383367を用いたところ、GCaseの核への集積が抑制された。 一方、GCaseの機能解析を行うためにsiRNAを用いたGCaseノックダウン系の確立を目指し条件検討を重ねた。現在、siRNA transfectionから24時間後に有意にGCase発現が抑制されることを確認している。
|