新規合成ペプチドによるラット直接覆髄を行った。実験は上顎第一臼歯に咬合面におこなったものをペプチド群とし、対照群は反対側第一臼歯に露髄だけをさせ直接覆髄剤を用いず仮封したものとした。直接覆髄2週後にラットを麻酔薬の過剰投与により安楽死させ、10%中性緩衝ホルマリンにて灌流固定を行った.上顎骨を摘出して同固定液にて浸漬固定を行い、マイクロフォーカスCT撮影を行った。CT像は読影後、不透過像と歯冠部歯髄腔の体積を計測しその割合を算出し、t検定を行った。その後、10%EDTA溶液にて摘出試料を脱灰し、組織標本作成後、ヘマトキシリンエオジン(HE)染色を施し、病理組織学的に観察し検討した。 マイクロフォーカスCT像ではペプチド群も対照群にも歯冠部の歯髄腔に不透過像の形成がみられた。歯髄腔における不透過像の割合はペプチド群の方が有意に高かった。また組織標本ではペプチド群は露髄面直下から歯冠部の歯髄腔の中央部、遠心部に向かうように大きく多量の硬組織の形成がみられ、硬組織形成部位の近辺に好酸性物質を胞体にもつ細胞の集簇が観察された。対照群では硬組織は露髄面直下から髄床底にわずかに一層形成されただけであった。硬組織形成部位の近辺で認めた酸性物質を胞体にもつ細胞の集簇より、新規合成ペプチドはHE染色では好酸性を示すため、新規合成ペプチドが硬組織の形成に関与した可能性が考えられる。 したがって新規合成ペプチドは直接覆髄材として歯内治療に応用できる可能性が示唆された。
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