研究課題/領域番号 |
18K09593
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
土田 祥央 日本大学, 医学部, 助手 (90410422)
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研究分担者 |
佐藤 守 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20401002)
西村 基 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (80400969)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GCF / HGFs / 質量分析計 / ユビキチン化 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
近年の技術革新により、タンパク質のユビキチン化を網羅的に探索することも可能になりつつあるが、歯周疾患の解明に応用するための方法論は確立されていない。本研究はユビキトーム解析を発展させ、様々な疾患に起こりうる代表的な翻訳後修飾であるユビキチン化に焦点をあてて、歯周疾患におけるユビキチン化を網羅的探索により捉え、歯周疾患の早期診断および再発予測治療効果判定等に応用することを目的としている。 キャリアプロテインの影響を受けずに高効率で再現性が良い有機溶媒沈殿法を用いて歯肉溝浸出液(GCF)とヒト歯肉線維芽細胞(HGFs)からペプチドの抽出を試み,抗ユビキチン抗体をカップリングしたカラムにGCFタンパク抽出液ならびにHGFs細胞抽出液を添加し、抗ユビキチン抗体を用いた免疫沈降を行って、ユビキチン化タンパク質を濃縮した。精製したユビキチン化タンパク質をトリプシン消化後、質量分析装置を用いたショットガン解析を行った。現在、各結合型に特有なシグネチャーペプチドの検出とMS/MS解析による結合型の特定とショットガン解析で特定の標的タンパク質に結合したポリユビキチン鎖の種類の同定を行っている。更に、HGFsの健常群と疾患群を混合して結合タンパク質を用いた免疫沈降し、SILAC法(Stable isotope labeling by amino acids in cell culture)にて同定と同時に定量を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
SILAC(Stable isotope labeling by amino acids in cell culture)細胞培養液中のアミノ酸を用いた安定同位体ラベルは、複雑なタンパク質サンプル中のタンパク質の同定と、発現量の比較定量を可能とする手法である。本年度はSILAC法に多大な労力と時間を費やしてしまい、大幅に遅れてしまった。各結合型に特有なシグネチャーペプチドの検出とMS/MS解析による結合型の特定とショットガン解析で特定の標的タンパク質に結合したポリユビキチン鎖の種類の同定についても若干遅れたが、想定内の遅れであった。
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今後の研究の推進方策 |
歯周疾患のバイオマーカーユビキチン化タンパク質・ペプチド候補の妥当性を検討するため、歯周疾患マーカー候補ユビキチン化タンパク質・ペプチドのバリディーションをウエスタンブロットにて行う予定である。 HGFsの健常群と疾患群を混合して結合タンパク質を用いた免疫沈降し、引き続きSILAC(Stable isotope labeling by amino acids in cell culture)法にて同定と同時に定量を試みる。また、歯周疾患で上昇傾向が示唆されたユビキチン化ペプチドを合成してアレイを作成する予定である。最終的に歯周疾患マーカーの質量分析計を用いた定量系の確立を目指す。特異抗体の作成が困難な場合は、三連四重極型質量分析計を用いたMRM法を利用する。MRM法の選択性とダイナミックレンジは格段に高く、その結果、複雑な試料から目的のペプチドを検出することも可能となる。また内部標準を用いれば標的ペプチドの絶対定量が可能な点も特徴である。ペプチドをダイレクトに測定可能であり、分子選択性が高く、高感度(ng/ml以下の検出感度)・同時多項目定量分析が可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現所属先の日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野の臨床検査専門医にも随時指導を受け、細かい軌道修正をしながら研究を実行する。歯周病学,質量分析,臨床検査医学の専門家の協力を得て、多面的に研究を遂行する体制を整えることができたと考えている。 設備、技術、学術、いずれの面においても十分な研究環境にあるが、臨床応用に耐えうる正確で安定した測定系を構築するためには数多くの試行錯誤と工夫を繰り返す必要がある。検査系を立ち上げ、安定させ、有用性を検証し、実臨床に応用するまでには消耗品を多く要することになる。しかし、購入予定であった試薬と処理キットが国内に在庫が無く、コロナ禍により海外取り寄せで年度内での納品ができなかったため、繰り越している。 次年度は当初の研究計画にそって使用していく。
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