研究実績の概要 |
フローサイトメーターでの検出が現有機器では技術的に難しいことであることが判明したため,免疫蛍光法による検討に絞り,その実験条件に多様性を持たせることで,臨床的にも参考になる所見の獲得に集中した. チタンインプラント表面を想定して,表面をリン酸カルシウム顆粒でブラスト処理したチタン板を用意し,この表面自体が血小板に及ぼす影響を研究する一環において,増殖因子とともにPPARγの動態について,カバーグラス上で動態と比較検討した.また,視点を変え,調製したPRF 内部における増殖因子とPPARγの局在についても,近赤外線イメージャーを用いて可視化を試みた. 前者では,試料としたブラスト処理チタン板の表面自体に強力な血小板活性化効果があり,PRPとして投与した場合も接着を促進することを発見し,合わせて増殖因子らの血小板細胞外への放出を認めた.カバーグラス表面は,PRPとして投与した血小板の接着は弱く増殖因子等の放出はわずかだったことと比較すると,臨床におけるブラスト処理チタンインプラントの埋植前処理としてPRPを使用することに科学的根拠を得た. 後者に関しては,特異性の高いモノクローナル抗体が入手可能なTGFβ1とPDGF-Bについて,洗浄過程を工夫することによって,その局在を非破壊的に2次元イメージとして可視化することができた.PRFの調製プロトコールによって,血小板や増殖因子の局在に相違が認められ,これは先行して実施した免疫組織化学的所見と一致するものであった.また,特に水平ローターの遠心機により調製するH-PRFにおいて血小板の活性化は,他のPRF (A-PRF, L-PRF, CGF)と比較して,抑制されたものであることを発見した.しかし,PPARγについては,市販の抗体のなかから最適な抗体を見つけることができず,可視化には至らなかった.
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