研究実績の概要 |
歯周炎は歯周病関連細菌により惹起される慢性炎症性疾患であり、細菌に対する免疫応答が歯槽骨吸収をはじめとする歯周組織破壊に関与していることが報告されている。Carnosic acidはローズマリーやセージに含まれる生理活性物質であり、抗酸化作用や抗癌剤作用があることがことが知られているが、歯周組織構成細胞に対する影響に関しての報告はない。本研究では、Carnosic acidがヒト口腔上皮細胞のケモカイン産生に与える影響に着目し、細胞内シグナル伝達経路の活性化に与える影響に関しても検討した。 Carnosic acidはIL-27が誘導したヒト口腔上皮細胞(TR146細胞)のTh1細胞浸潤に関与するCXCR3リガンド(CXCL9,CXCL10,CXCL11)の産生を濃度依存的に抑制した。また、Carnosic acidはIL-27が誘導したSTAT1,STAT3,Aktのリン酸化を減弱させた。さらに、IL-27が誘導したCXCL9,CXCL10,CXCL11産生はSTAT1,STAT3,Aktのシグナル伝達阻害物質により有意に抑制された。 今回の結果より、Caronosic acidはTR146細胞のSTAT1,STAT3およびAktのシグナル伝達経路を阻害することにより、IL-27が誘導するCXCR3リガンド産生を減弱できることが明らかとなった。このことは、Carnosicacidを歯周炎病変局所に投与することにより、口腔上皮細胞のCXCR3リガンド産生を抑制することでTh1細胞の浸潤および集積が減少されることにより歯周炎病変局所で抗炎症作用を発揮できる可能性が示された。
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