研究課題/領域番号 |
18K09602
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
久保 至誠 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (80145268)
|
研究分担者 |
二階堂 徹 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00251538)
高垣 智博 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (60516300) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | くさび状欠損 / 欠損形態 / 進行速度 / 進行方向 / コンポジットレジン修復 / 長期臨床成績 / 1ステップ・セルフエッチシステム / フロアブルレジン |
研究実績の概要 |
くさび状欠損の進行を調べるために作製した一連のレプリカ模型を3次元計測し、くさび状欠損の欠損形態、サイズ、進行速度、進行方向に関して解析し、研究成果としてまとめた。すなわち、皿型に比較すると、くさび型の欠損は歯髄(深さ)方向により速く進行することが明らかになった。一方、欠損形態によって歯軸(縦)方向の進行に差は見られなかった。欠損サイズについては、深くなるに従い歯髄方向に大きく進行したが、縦方向の進行には関連は認められなかった。さらに、くさび状欠損の進行は速い時期(進行期)と遅い時期(停滞期)を経ながら進行することも示唆された。これらの成果を原著論文(英語)として著し、学術雑誌に掲載された。 ペーストタイプとフロアブルレジンを比較した臨床試験に関しては、追跡率が高かった8年後までの成績を先ずまとめ、原著論文(英文)を著し、学術雑誌に投稿した。査読者のアドバイスやコメントに対応したことで、試験方法の記載と結果の表し方が著しく改善され、今後の論文作成に際して大変参考になった。フロアブルレジンの摩耗は4年後から観察され始め、8年後には10%に達し、耐摩耗性に問題があることが明らかになった。また、修復物には直接関係していないが、くさび状欠損の再発が20%程度生じ、くさび状欠損の原因究明とその除去の重要性が示唆された。 接着システムにおけるHEMAの有無が接着耐久性に及ぼす影響に関しては、10年後までの成績をまとめ、原著論文作成の準備を進めた。基礎研究では親水性のHEMAを含有している接着システムの接着耐久性の劣化が懸念されていたが、臨床的には接着耐久性が関与する脱落および辺縁着色において10年後まではHEMAの有無間で差は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年3月までに、くさび状欠損の経時的変化(進行)に関する研究ならびにくさび状欠損部コンポジットレジン修復の長期(15年間)追跡調査の臨床研究の終了手続きを終え、長崎大学病院臨床研究倫理委員会に承認された。 くさび状欠損の欠損形態、サイズ、進行速度、進行方向に関する研究成果をまとめた原著論文(英文)が学術雑誌に掲載された(2022年1月)。 くさび状欠損部のコンポジットレジン修復に関しては、臨床研究開始時はランダム化比較試験として実施していた。しかし、計画書に研究期間を明示していなかったので、長期臨床成績をまとめて報告するために改めて倫理委員会に申請し、観察研究として既に承認を得ていた(2017年年4月17日)。 フロアブルとペーストタイプのコンポジットレジンを用いたくさび状欠損部修復の観察研究に関しては、高いリコール率が維持できた8年後までの研究成果をまずまとめ、原著論文(英文)を著して学術雑誌に投稿した。新型コロナウイルスの影響のためか通常より査読作業に時間がかかり、2022年2月中旬に査読結果(Major revision)の通知があった。レフェリーのコメントが多く、その対応に時間がかかり、年度内の再投稿に間に合わなかった。しかし、ネイティブの研究者によるチェックを受けるところまで進むことはでき、次年度早々に再投稿する予定である。 上記論文がアクセプトされたら、我々の研究方法が認められたことになる。同様の研究計画で実施した接着システムにおけるHEMAの有無に焦点を当てた観察研究に関しても、10年後の成績をまとめ、原著論文に著す準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
フロアブルとペーストタイプのコンポジットレジンの8年後臨床成績をまとめた論文を再投稿する。また、長期間(12年、15年)の追跡結果をまとめ、原著論文(英文)を学術雑誌に投稿する。さらに、同様の研究計画で実施した接着システムにおけるHEMAの有無に焦点を当てた観察研究に関しても、10, 12, 15年後の成績をまとめ、学術雑誌への掲載を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、年度内の国内外の学会はすべてWeb開催となったため、成果発表、研究打ち合わせに計上していた旅費予算を令和3年度も使用することがなかった。 新型コロナウイルスの感染状況次第であるが、Web開催の学会が続くようであれば、成果発表の旅費の費目を論文の投稿掲載料等に変更し、2022年度中に全額執行する計画である。
|