研究課題/領域番号 |
18K09608
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
菊池 有一郎 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30410418)
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研究分担者 |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00212910)
柴山 和子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (60408317)
国分 栄仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453785)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周病原細菌 / Capnocytophaga ochracea / 転写因子 / OxyR / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
本研究は、口腔細菌Capnocytophaga ochracea (C. ochracea)と歯周病発症との関連性について検討することが目的である。環境変化に富む歯肉溝にC. ochraceaが慢性感染することが歯周病発症に必須と考え、その慢性感染に重要な役割を果たすと予想される転写因子に注目した。転写因子のなかで酸化ストレス消去に関係すると推測するOxyRタンパク質について、研究開始年度において変異株の作製に成功し、野生株とOxyR変異株を用い阻止円形成法にて酸化ストレス感受性試験を行った。その結果、野生株に比べ変異株にて有意に酸化ストレスに対する感受性が増加した。 本年度4月から研究代表者の米国における海外出張が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の為延期となった。だが米国及び日本の状況が安定すれば再度渡米する予定になっていたが、いつから開始可能か予想することができず、そのため長期間を要する実験系の開始を中止した。また所属大学研究室の約2ヶ月間の閉鎖も影響し、今年度の研究計画は予定していた計画から大幅に変更せざるを得なかった。このような状況であったが、以下に示す実験を遂行し結果を得ることができた。 C. ochracea野生株とOxyR変異株の嫌気培養下における、酸化ストレスに関与する遺伝子(sod, ahpC, trx)の転写量をリアルタイムPCR法にて解析した。その結果、野生株と比較しOxyR変異株においてsod, ahpCの転写は顕著に減少した。このことより、転写因子OxyRはsod, ahpCの転写調節に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。またこの結果は、前年度に判明した野生株と比較しOxyR変異株は酸化ストレスに対する感受性が高いことの裏付けとなることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」欄にて記載したが、研究代表者は2020年4月から米国にて海外出張する予定であった。だが、新型コロナウイルス感染症の為、日米両方の大学から許可が下りず、状況が改善するまで渡航延期となった。このため、開始から終了まで長期間の実験期間が見込まれる実験系について、今年度は断念することを決定した。また新型コロナウイルス感染症のため、所属大学が4月から6月まで閉鎖されたため、研究代表者および分担者の研究スケジュールに多大な影響を受け、実験計画の大幅な変更を余儀なくされた。また、2021年の1~3月に渡米できる見込みが立ち再度準備に取りかかることになった。 このような事情により、現環境下においても短期間で結果をだすことが可能なリアルタイムPCR法の実験を行い前年度の研究結果と矛盾しない実験結果を得ることができたので、総合的判断結果として、「遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、本年度の研究結果により、C. ochraceaの転写因子OxyRが菌の酸化ストレス防御に関与し、OxyRの支配下にSodやAhpCが存在し、これらのタンパク質の遺伝子発現を調節して酸化ストレスを消去していることが示唆された。 これらの結果から、以下に示す研究計画を予定している。 ① OxyRとSod, AhpCタンパク質遺伝子のプロモーター領域との結合実験。Sod, AhpCタンパク質の発現をOxyRが直接支配しているか否か確認するため、EMSA法によりOxyRの組み換えタンパク質がそれぞれの遺伝子のプロモーター領域に結合するかどうか検討する。 ② C. ochraceaと他の口腔細菌との共生関係の解明。早期定着細菌である口腔レンサ球菌、もしくは歯周病原細菌との共生において、C. ochraceaがもたらす役割について解析する。共生細菌の候補として、デンタプラーク中の初期定着菌群の中で過酸化水素を産生する口腔レンサ球菌Streptococcus gordonii やStreptococcus sanguinis、後期定着細菌である歯周病原細菌の中では、レッドコンプレックス細菌としてPorphyromonas gingivalis, Treponema denticola, Tannerella forsythia, 他にはFusobacterium nucleatum, Prevotella intermediaなどを予定している。これらの細菌とC. ochraceaとの共培養実験系にて、野生株とOxyR変異株のバイオフィルム形成量について、濁度やクリスタルバイオレット染色法や共焦点レーザー顕微鏡解析にて測定し、変化が認められる細菌の組合せを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症とそれに伴う大学封鎖による研究実行が困難であったこと、また研究代表者が今年度より開始予定であった海外出張の延期およ再度の渡米申請手続きなどにより、今年度の長期間を要する実験計画を実行できなかったため、予算の執行を行うことができなかった。現時点では、新型コロナウイルス感染症による大学再閉鎖の可能性はほぼないと考えるので、来年度には「OxyRとSod, AhpCタンパク質遺伝子のプロモーター領域との結合実験」と「C. ochraceaと他の口腔細菌との共生関係の解明」に関する実験系の消耗品購入に予算の執行を計画している。
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