本研究は糖尿病でのフルクトースの過剰摂取と歯周病増悪の因果関係を骨芽細胞を用いて分子機構を細胞・分子生物学的に解明することを目的し,本研究を企図した。具体的には歯周病原因菌由来のリポ多糖(LPS)で炎症を惹起させた骨芽細胞の高グルコース及び高フルクトース条件下における炎症性サイトカイン産生量を調べ,合わせて生体内の過剰な糖が生成する老化因子である終末糖化産物(AGEs)との関連についても解明する。平成30年度には高グルコース刺激骨芽細胞はLPS誘導性の炎症を増強させるという結果を得たのを受けて,その分子メカニズムを解明するために,令和元年度はグルコーストランスポーター4(GLUT4)に着目し,GLUT4の阻害剤を加えてLPS誘導性の炎症性サイトカイン産生に及ぼすグルコースの影響を調べた。その結果グルコースによるIL-6発現はGLUT4を介して制御されている可能性が示唆された。さらに関連実験として,令和元年度は,終末糖化産物(AGEs)のLPS誘導性炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響を調べた。その結果AGEsはLPS誘導性COX2発現を有意に上昇させる事がわかった。この結果はAGEs がLPSで惹起した炎症を増強させ,歯周病の歯槽骨吸収に関与する可能性が示唆された。この結果より令和2年度は,AGEsが骨芽細胞の骨形成に及ぼす影響を調べた。その結果AGEsは骨芽細胞の細胞外マトリックスタンパク発現,ALP活性および石灰化物形成を抑制した。よってAGEsは骨芽細胞のLPS誘導性の炎症性物質の産生を促進させるだけでなく,骨芽細胞の骨形成能を低下させることが示唆された。
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