研究課題/領域番号 |
18K09613
|
研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
前田 博史 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (00274001)
|
研究分担者 |
辻 則正 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (30454565)
高柴 正悟 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50226768)
曽我 賢彦 岡山大学, 大学病院, 准教授 (70509489)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Rothia mucilaginosa / Rothia aeria / Rothia dentocariosa / 感染根管 / 易感染性宿主 |
研究実績の概要 |
Rothia mucilaginosaの根管内感染分布状態を調べ、根尖性歯周炎の病態との関連性について検討した。臨床サンプルの採取は大阪歯科大学医の倫理委員会の承認のもと(大歯医倫 第110972号)、指針に従って実施した。 根管細菌サンプルを200名の患者から採取した。採取したサンプルからDNAを抽出し、PCR法を用いて、R. mucilaginosa, R. aeria,ならびにR. dentocariosaの根管内分布を調べた。その結果、R. mucilaginosaは24.5%、R. aeriaは47.5%、そしてR. dentocariosaは27.5%の割合で感染根管内に分布していることが明らかとなった。 根尖部歯肉に腫脹を認める場合のR. mucilaginosaの検出頻度は42.9%であり、症状との関連性が認められた。同様に根尖部にエックス線透過像が存在する場合、ならびに打診痛が認められる場合のR. aeriaの検出頻度は、58.1%ならびに56.7%であり、R. aeriaの分布とそれぞれの臨床所見に関連性があった。さらにR.aeriaが検出された場合には、何等かの炎症所見が患歯に認められることが、統計学的有意差をもって示された。 Rothia種は、造血幹細胞移植患者をはじめとする易感染性宿主の全身感染症起因菌としての報告が相次いでいる。本研究結果は、日本人の感染根管内に比較的高頻度にRothia種が分布していることを示すものであり、感染根管が、易感染性宿主においてはRothia感染症の感染巣となるリスクを示唆するものである。また、炎症所見との関連性が認められる結果は、根管内から歯周組織へ菌が移行していることを強く示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた数の臨床サンプルを収集するために時間を要した。 新型コロナウイルス感染防止のため、研究が中断している状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、Rothia種の中で、もっとも全身感染症の報告が多いR. mucilaginosaを標的として病原因子の同定を試みる。バイオフィルム形成因子、ならびにMMP様のタンパク質分解酵素が病原性と関連している可能性が高く、関連分子の単離、ならびに機能解析を実施する予定である。遺伝子改変が困難であれば、アンチセンス鎖をもったペプチド核酸を応用して機能解析、ならびに病原因子の抑制と抗菌療法の開発を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
臨床研究(臨床サンプルの収集)に予定以上の時間を費やしたため、病原因子の解析がやや遅れている。このため、解析に使用する予算が余剰となった。 予定していた病原因子の解析研究は2020年度に実施予定であり、余剰となった予算はこれに使用する計画である。
|