研究課題/領域番号 |
18K09615
|
研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
金子 高士 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10284697)
|
研究分担者 |
吉永 泰周 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (60452869)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インフラマソーム / カスパーゼ4 / カスパーゼ5 / ピロトーシス / NLRP3 / カスパーゼ1 / 歯周病原細菌 / 歯周炎 |
研究実績の概要 |
歯周炎歯周組織において一部の歯周病原細菌が歯肉上皮組織や、さらに深部の結合組織内に侵入していることが報告されている。しかしながら角化層、顆粒層、 有棘層、基底層、基底膜から構成される重層上皮において、どのような経路で細菌が侵入しているか明らかではない。そこで我々は歯肉上皮細胞と歯肉線維芽細 胞からなる三次元歯肉再構成モデルを作製し、トレーサーで標識した歯周病原細菌を感染させ、継時的に観察することにより歯肉上皮組織内への侵入経路を明らかにしようと考えた。そこで口腔扁平上皮細胞株のHSC-2と健常者の歯肉から採取した歯肉線維芽細胞を用いリフトアップ法にて三次元歯肉モデルの作製を試み たが、歯肉上皮はガン真珠様に重層し、正常な歯肉組織像を示さなかった。そのため、我々は健常者の歯肉から上皮細胞による三次元歯肉モデルの作製を試みたが、ヒト口腔内から分離した上皮細胞は複数回の継代培養ができず、ヒトプライマリー細胞での三次元歯肉モデル作製は頓挫している。 一方、非定型NLRP3インフラマソーム活性化に伴うピロトーシスと呼ばれる細胞死が細菌感染と関連していることが示されている。そこで我々はHSC-2単層培養におけるカスパーゼ4、5刺激による非定型NLRP3インフラマソーム活性化による上皮細胞細胞死に関する研究を行った。Echerichia coli LPSのHSC-2細胞へのトランスフェクションは、細胞死を誘導するのに対して、Porphyromonas gingilvalis LPSのトランスフェクションは細胞死を誘導しないことを見出した。さらにマクロファージのTHP-1細胞を用い実験を行った。THP-1細胞においてはエレクトロポレーション法を用いてLPSの細胞質内に配送した。THP-1細胞においてもP.gingivalis LPSはE.coli LPSよりも弱い細胞死誘導を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
歯肉扁平上皮細胞腫瘍株のHSC-2とヒト歯肉から採取した線維芽細胞を用いた三次元歯肉再構成モデルの作製を試みたが、歯肉上皮はガン真珠様に重層し、正常 な歯肉組織像を示さなかったことから、本実験のモデルとしては適さないと考えられた。そのためヒトプライマリー歯肉上皮細胞を用いた三次元歯肉再構成モデ ルを作製することとしたが、歯肉上皮細胞の継代・培養が困難であり、十分な細胞数の確保ができなかったため現在、ヒト細胞を用いたモデル作製は頓挫している。さらにコロナウイルス感染症の拡大に伴い、イレギュラーな業務が生じ、実験計画に遅延が生じている。一方HSC-2単層培養を用いた実験では、P. gingivalis LPSのカスパーゼ4活性化能が弱く、上皮細胞死を誘導できないという新しい知見を得ることができ、 現在はその現象の基本メカニズムを解明する実験を遂行している。
|
今後の研究の推進方策 |
歯周病原細菌LPSの カスパーゼ4の活性化能について、P.gingivalisに加えて、Aggregatibacter actinomycetemcomitansやFusobacterium nucleatumのLPSでも実 験を行う。またにカスパーゼ4とカスパーゼ1の遺伝子発現を抑制した細胞実験を行い、非定型性NLRP3インフラマソーム活性化によるピロトーシス誘導、また IL-1βプロセッシングにおける、これらの分子の役割を明らかにする予定である。さらにこれらの細菌感染時の細胞応答についても実験を行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒト歯肉上皮ガン細胞もしくはプライマリーヒト歯肉上皮細胞を使用した歯肉3次元構築モデルの作製がうまくできなかったこと、さらにコロナウイルス感染症の拡大からイレギュラーな業務が生じたため計画通りの実験ができなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は歯肉単層培養細胞さらにマクロファージ細胞を使用した各種実験を行っていく予定である
|