研究実績の概要 |
歯周病は組織破壊性の慢性炎症性疾患で、歯周病により失われた歯周組織を再生させる歯周組織再生療法は、国民の健康寿命の延伸とQOL向上に大いに寄与すると考えられ、さらなる適応症の拡大、効率的かつ簡便に組織再生を成しえる新規治療法の研究・開発が必要となる。我々は新規の成長因子として、強力な骨形成能力と多面的な作用で近年注目を集めているBone morphogenetic protein-9 (BMP-9)に注目し、本研究においてBMP-9による歯周組織由来細胞の分化制御の解明と新規歯周組織再生療法への応用・展開についての基盤を確立することを目的として研究を行った。①骨芽細胞においてBMP-9は直接的にGSK3βのリン酸化を誘導し、BMP-9による早期のGSK3βのリン酸化は,Aktのリン酸化とGIPC1とEndoglinに密接に関与している可能性が示唆された。②整形外科分野にて応用されているlow‐intensity pulsed ultrasound (LIPUS) のヒト歯根膜由来線維芽細胞に対する作用を解析した結果、BMP-9誘導性骨芽細胞様分化をLIPUSは促進した。またLPSが惹起する炎症状態下でのBMP-9誘導性骨芽細胞様分化の抑制をLIPUSは解除しすることが見出された。③炎症環境下(IL-1β存在下)においてヒト歯根膜細胞のBMP-9誘導性骨芽細胞様分化は抑制された。これには一部Activin-Follistatin系の関与が示唆された。④ビーグル犬2壁性歯周組織欠損モデルを用いBMP-9の歯周組織再生効果の検討について実施した。外科的に作製した2壁性骨欠損(5×5×5mm)に、欠損のみ, 吸収性コラーゲンスポンジ(ACS)のみ, 低濃度BMP-9/ACS, 高濃度BMP-9/ACS群を埋植し、8週間の観察期間を設け、現在評価中である。
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