研究課題/領域番号 |
18K09632
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
庵原 耕一郎 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 幹細胞再生医療研究部, 室長 (60435865)
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研究分担者 |
中島 美砂子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 幹細胞再生医療研究部, 部長 (20207773)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 象牙質誘導デバイス / 象牙芽細胞 / 歯髄幹細胞 / 細管象牙質 |
研究実績の概要 |
私共は歯髄幹細胞を歯の内部に移植し、歯髄・象牙質を再生させ歯の機能を回復させる歯髄・象牙質再生治療法の開発を行ってきた。今回、再生歯髄面上に強度の高い細管象牙質を再生させることを目的として、象牙質の主成分であるハイドロキシアパタイトを象牙細管と同様の細管構造を有する形に成型した象牙質誘導デバイスを開発した。今年度はin vitroにおいて1.象牙質誘導デバイス上で象牙芽細胞分化を誘導する最適条件を検討した。また、2.抗菌性を有するナノパーティクルを象牙質誘導デバイスに付与して、細菌感染を遮断できるかを検討した。 1について、象牙質誘導デバイスにフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンを各5, 50, 500μg/mlでコーティングしたもの、およびプラズマコーティングしたものに歯髄幹細胞を播種して接着率を測定した所、50, 500μg/mlのコラーゲン、5μg/mlラミニンでコーティングしたものおよびプラズマにてコーティングしたものが最もよく接着が確認できた。また、共焦点顕微鏡にて、一週間象牙質誘導デバイス上での歯髄細胞を培養し、象牙芽細胞様の突起の伸長を計測した所、50μg/mlのラミニン、50μg/mlのフィブロネクチンでコーティングしたものおよびプラズマにてコーティングしたものが最もよく突起を伸長していることが確認できた。これより両方に成績の良いプラズマコーティングを最適な条件とした。 2について、象牙質誘導デバイスにナノパーティクルを24時間浸漬させ、これをS. mutansを塗布したBMI寒天培地上に静置し、抗菌効果を確認した所、阻止円の形成を確認できた。また、S. mutans と共にBMI培地にて培養後固定し、走査電子顕微鏡にて細菌の有無を確認した所、細菌の付着は確認できなかった。これによりナノパーティクルにより象牙質誘導デバイスが抗菌性を有する事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、歯の根管内に移植できる象牙質誘導デバイスの仕様(直径1.2-1.4mm, 高さ1.5mm)を決定し、この条件で直径10μmの小孔を整然と大量に付与したハイドロキシアパタイトを製作した。しかし、試作の段階で、外周部の欠陥が存在したり、外径1.6~1.7mmが限界最小サイズであった。歯の根管の大きさがおおよそ1.0~1.4mmであったため、このサイズまで小さくすることが問題となった。機械加工で現状の直径1.7-1.8mmを直径1.2mmに加工することで解決したが、象牙質誘導デバイスの単価が高くなった。最終的に、このデバイスを用いて最適条件を決定することができた。 また、抗菌性の付与については当初、キトサンナノパーティクルを用いる予定であったが、海外の研究者からの入手を予定していたが、入手できなかったため、国内の同様の性質をもつナノパーティクルを用いた。最終的に象牙質誘導デバイスに抗菌性を持たすことができた。また、結果的に安全性がすでに証明されたものを使用することになったため、実用化にも大きく前進できた。
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今後の研究の推進方策 |
イヌ再生モデルへの移植(in vivo) 令和元年度:イヌ生活歯髄切断モデルに、本年度決定されたプラズマコートかつナノパーティクル付与象牙質誘導デバイスを切断面上に設置する。さらに上部をグラスアイオノマーセメントおよびレジンにて封鎖する。移植後30日目に抜歯して固定、薄切する。H-E染色あるいはグラム染色により、象牙質誘導デバイス下の細管象牙質形成、炎症および細菌浸潤の有無を確認する。また、in situ hybridizationにてDspp, enamelysinの発現を確認して象牙芽細胞への分化状態を明らかにする。これにより、比較的短期間で、象牙質誘導デバイスが象牙質形成効果があるかを確認できる。 令和2年度:歯髄幹細胞およびG-CSFをイヌ抜髄根管モデルに移植後、本年度に決定されたプラズマコートかつナノパーティクル付与象牙質誘導デバイスを移植面上に気泡が入らないようにセットする。さらに上部をグラスアイオノマーセメントおよびレジンにて封鎖する。移植後120日目に抜歯して固定、薄切する。H-E染色あるいはグラム染色により、象牙質誘導デバイス下の細管象牙質形成、炎症および細菌浸潤の有無を確認する。また、in situ hybridizationにてDspp, enamelysinの発現を確認して象牙芽細胞への分化状態を明らかにする。これにより、最終目的である、歯髄再生治療における象牙質誘導デバイスによる大量象牙質誘導が可能かを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
象牙質誘導デバイスの仕様が決定し、試作が終了されるまでに、時間がかかったため最終産物の購入が平成30年度の2月になった。それに伴い、最終的な象牙質誘導デバイスの金額の決定も遅くなったため、必要数を購入後、残額が生じた。残りの金額は平成31年度より、イヌの実験に費用がかかるため、加算して使用させていただく。
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