私共は歯髄幹細胞を歯の内部に移植し、歯髄・象牙質を再生させ歯の機能を回復させる歯髄・象牙質再生治療法の開発を行ってきた。今回、再生歯髄面上に強度の高い細管象牙質を再生させることを目的として、象牙質の主成分であるハイドロキシアパタイトを象牙細管と同様の細管構造を有する形に成型した象牙質誘導デバイスを開発した。一昨年度はin vitroにおいて象牙質誘導デバイス上で象牙芽細胞分化を誘導する最適条件を検討した。さらに抗菌性を有するナノパーティクルを象牙質誘導デバイスに付与して、細菌感染を遮断できるかを検討した。この結果、象牙質誘導デバイスにプラズマコーティングをすることで、歯髄細胞を接着させ象牙質誘導を行うことができたため、これを最適な条件とした。また、象牙質誘導デバイスにナノパーティクルを付与させることにより抗菌性を有させる事ができた。昨年度は実際に象牙質を誘導できるかを短期的に確認するため、in vivoにおいてイヌ生活歯髄切断モデルを作製後、象牙質誘導デバイスを適応して、象牙質誘導を試みた。この結果、一か月後には、象牙質誘導デバイスによる大量の象牙質形成を確認でき、象牙芽細胞を誘導することができた。また、一部に細管象牙質様構造を形成がみられた。また、象牙質誘導デバイス適応による炎症も特にはみられなかった。今年度は歯髄再生モデルにおける象牙質誘導デバイス適応による象牙質誘導を行ったところ、再生歯髄上部に象牙質の形成がみられた。一方、再生象牙質上部だけではなく、再生象牙質中にも骨様象牙質の形成が見られ、これはハイドロキシアパタイトよりリン酸が溶出されこれをもと基質が形成されたことが推測された。これより、象牙質誘導デバイスの象牙質再生の有効性が示唆されたものの、より改善が必要であると考えられた。今後は企業と連携して、実際に臨床に応用できるかを検討する予定である。
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