研究課題
免疫組織化学染色によって3 週齢のマウスの上顎第1大臼歯および切歯における MSX1、MSX2タンパク質の局在を解析した。1)臼歯:歯根の象牙芽細胞では核と細胞質の両方でMSX1陽性なのに対し、冠状象牙芽細胞では細胞質でのみ弱い陽性反応を示した。 一方、歯髄組織の中心にある血管を取り囲む歯髄間葉系細胞では核のみMSX1 陽性を示した。MSX2の場合、歯根部では象牙芽細胞の核が陽性を示したが、象牙芽細胞下層では弱い陽性反応を示した。また、歯冠部では、成熟象牙芽細胞の細胞質および 象牙芽細胞下層の細胞の核がMSX2陽性を示した。これらの結果は、象牙質形成が活発な根の象牙芽細胞の転写調節においてはMSX1、MSX2が機能しているが、象牙質形成がほぼ完了している冠状象牙芽細胞ではあまり働いていない可能性を示唆している。2)切歯:幼若象牙芽細胞においてMSX1発現が確認でき、分化と共にその強度が増加した。一部の細胞を除いて核での発現は認められないが、細胞突起基部に強い反応が見られた。MSX2の場合、幼若象牙芽細胞の核が陽性を示したが、成熟象牙芽細胞では核の陽性が消失した。また、象牙芽細胞下層においては、エナメルに覆われた唇側象牙質ではMSX2陽性を示し、セメント質で覆われた舌側象牙質では発現レベルが低下していた。それぞれ、歯冠と歯根に相当するので、臼歯の所見と一致した。これらの結果により、MSX1、MSX2タンパク質は、健康な歯における歯髄幹/前駆細胞の維持などの生理学的役割に加えて、損傷した歯髄組織における一次または二次象牙質形成および修復象牙質または骨象牙質/骨形成の制御に関与している可能性が示唆された。
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Clinical, Cosmetic and Investigational Dentistry
巻: Volume 14 ページ: 71~78
10.2147/CCIDE.S354153