研究課題/領域番号 |
18K09641
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
入江 一元 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70223352)
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研究分担者 |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30220718)
建部 廣明 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (40638293)
細矢 明宏 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70350824)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 幹細胞 / 硬組織 / Gli1 |
研究実績の概要 |
歯の発生段階や頭蓋冠の骨欠損修復過程においてヘッジホッグシグナリングの下流にある転写因子Gli1を発現する細胞が幹細胞特性を示すことが示されたことからGli1に着目し、歯髄や歯周組織に局在する幹細胞による硬組織形成を検討してきた。これらの幹細胞を選択的に抽出し、象牙芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞などの硬組織形成細胞や線維芽細胞への分化が誘導できれば歯や歯周組織の再生に格段の進歩を導くことができる。本研究では、近年、幹細胞特性を有し、歯髄傷害時に象牙芽細胞へ分化することが報告された歯髄の細胞がGli1を発現することから、誘導性Cre/loxPシステムを導入した細胞系譜(フェイトマッピング)解析が可能なマウスを用い、Gli1陽性歯髄幹細胞から硬組織形成細胞・象牙芽細胞へ分化していく過程を検討してきた。このマウスはタモキシフェンを投与するとその子孫細胞も含めTomatoで標識される。4週齢のマウスにタモキシフェンを投与しTomato標識によりGli1発現細胞が歯髄、歯根膜に局在することを確認し、さらに歯根膜ではTomato標識細胞が8週にかけ増加するが、歯髄では大きな増減がみられないことを確認した。生後4週のマウスにタモキシフェンを投与した後、第一臼歯を抜去し、同腹子に移植すると歯髄内に形成された硬組織の表面にTomatoで標識された細胞が配列しGli1陽性細胞が歯髄内の硬組織形成細胞に分化したことを示していた。また移植歯の根分岐部に認めた新生骨の表面にもTomato標識の細胞が配列していた。これらGli1陽性細胞はコロニーを形成しするとともに軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞に分化することができ幹細胞特性を持つものと思われた。また歯根膜のGli1陽性細胞を生後8週以降に追跡してもほとんど数を増やさないが、抜歯後の移植で増殖し、硬組織形成細胞に分化することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
タモキシフェン投与後のGli1-CreERT2-Tomatoマウス臼歯に歯髄におけるGli1陽性細胞の分布を確認したが、適切な象牙質窩洞の形成に修練を要し、コロナ禍でのGli1-CreERT2-Tomatoマウスの供給との関係で、術後1-7日後の組織で象牙質再生過程におけるGli1-CreERT2-Tomato陽性細胞の局在の検討には進んでいない。また、Gli1-CreERT2-Tomato;p53-/-マウスを作出し、象牙芽細胞系譜細胞の増殖に供する予定であるがp53の導入に時間を要することになった。未分化細胞マーカーによる検討のための臼歯窩洞形成ラットを作製し、Gli1陽性細胞とその系譜細胞の局在と未分化細胞マーカーの局在について検討する準備を整えた。一方、移植実験ではGli1陽性の細胞が歯周組織の再生過程で線維芽細胞のほか骨芽細胞やセメント芽細胞などの硬組織形成細胞にも分化することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
タモキシフェン投与後のGli1-CreERT2-Tomatoマウス切歯あるいは臼歯に象牙質窩洞を形成し、術後1-7日後の組織で象牙質再生過程におけるGli1-CreERT2-Tomato陽性細胞の局在を検討するとともに未分化細胞マーカー、象牙芽細胞分化マーカーを用いてTomato陽性細胞の分化段階を検討する。Gli1-CreERT2-TomatoマウスでのGli1陽性細胞と未分化細胞マーカー、象牙質分化マーカーの比較検討ができないようであれば、すでに作製済みに臼歯窩洞形成ラットでGli1陽性細胞と未分化細胞マーカーの局在被殻を行うとともに象牙質分化マーカーによる局在検討を行う。また、窩洞形成動物の歯髄組織から経時的にRNAを回収し象牙芽細胞系譜細胞の修復過程における分化度を明らかにしていく。 歯髄におけるGli1陽性細胞の検討が難しい場合には、歯根膜でのGli1の多分化能、硬組織形成能について検討する。
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