研究課題
本研究では、骨質解析によるインプラント周囲顎骨の荷重支持機能の定量評価とオステオンが新生される荷重環境の解明、および骨の質的因子と力学機能を考慮したインプラント周囲顎骨の最適化手法確立の2点を目的とする。方法として、1)骨梁三次元ネットワークの構造解析、2)オステオンの走行・骨細胞動態とリモデリング機序、3)生体アパタイト結晶配向とコラーゲン線維走行の異方性を解析し、骨質を考慮したインプラント周囲顎骨のバイオメカニクスシミュレーションを実現する。研究は、生前に歯科インプラントが埋入され機能していたヒト顎骨の構造解析と荷重条件をコントロールした動物実験による2パートから行われている。ヒト試料に関しては、歯科インプラント周囲顎骨におけるオステオン分布、生体アパタイト結晶の配向性、コラーゲン線維の走行異方性について概ね解析を終了した。これらの結果について、日本口腔インプラント学会をはじめとする学会発表を行った(第48回デンツプライシロナ賞受賞)後、現在学術雑誌への投稿準備を進めている(追加実験を並行して実施中)。動物実験については、尾部懸垂マウスを用いた研究を進めており、大腿骨へのインプラント埋入を安定して行えるように手技を確立し、脱灰標本および研磨標本を作製して骨の質的因子について検索を開始したところである。同時に、インプラント周囲顎骨におけるコラーゲン線維走行異方性を考慮した三次元有限要素解析を進めており、より材料工学的に実際に近い複合材料としての顎骨解析を目指し、研究を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
ヒト試料に関しては概ね解析を終了しており、学会発表後に学術雑誌への投稿準備を進めていることから、当初の予定よりもかなり速いペースで研究が進んでいる。一方、動物実験については、尾部懸垂マウスを用いた研究モデル構築と、難易度の高い大腿骨へのインプラント埋入について手技を確立するのに時間を要したため、骨の質的因子については検索を開始したところであることからやや進捗は遅れているといえる。SHGイメージングを用いたコラーゲン線維の異方性解析について、当初はいかに解析結果を算出するかについて試行錯誤を行うこととなったが、ImarisおよびImageJを併用した角度分布解析により、線状構造については定量評価が可能となった。ただ、オステオン内部のコラーゲン線維は環状を呈することが多く角度を定義することが難しいため、今後の課題としたいと考えている。
2019年度に導入予定の新型micro-CTは撮像分解能が0.5マイクロメートルであり、骨小腔、骨細管を三次元的に撮像可能である。世界的にみても、骨の構造特性はミクロとナノオーダーの間のメゾスケールまで解析が進み、血液供給経路の解析についても今後急速に構造特性と機能の両面から進めるシステムにシフトしていくと考えられる。今後本研究はできうる限りミクロ/ナノ構造と機能、そして細胞動態に着目し、骨構造と力学機能についてその一端を解明していく予定である。単に1つの骨研究として進めるのではなく、従来の骨解析と工学的手法を用いた新しい定量解析をより明確に連結し、メカノバイオロジーをも考慮したアプローチで、骨の特性の理解をさらに深めていく。
多光子励起位相差顕微鏡使用時の消耗品費としての使用を予定している。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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