研究課題/領域番号 |
18K09643
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
松永 智 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (70453751)
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研究分担者 |
疋田 温彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60443397)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨質 / 力学機能 / 歯科インプラント / オステオン / 顎骨 / 生体アパタイト結晶配向性 / コラーゲン線維の走行異方性 / SHGイメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、骨質解析を用いたヒト歯科インプラント周囲顎骨における機能圧支持機能の定量評価およびオステオンが新生される荷重環境の解明と、骨の力学機能と質的因子の関連性からインプラント周囲顎骨の最適化手法を確立することの2点を目的とする。1)骨梁三次元ネットワークの構造解析 2)オステオンの走行・骨細胞動態とリモデリング機序、3)生体アパタイト(BAp)結晶とSHGイメージングを用いたコラーゲン線維走行の異方性を解析し、骨質を考慮したインプラント周囲顎骨のバイオメカニクスシミュレーションを実現する。 研究は、生前に歯科インプラントが埋入され、実際に亡くなる直前まで機能していたヒト顎骨の構造解析と、インプラントを埋入して様々な荷重条件を与える動物実験という2つの軸をもって進められている。 ヒト試料についてはn数を増加させることができ、追加の解析(オステオン分布/走行、BAp結晶配向性、コラーゲン線維の走行異方性)を行っており、これまでの試料と同様に順調に解析が進んでいる。これまでに得られた結果について第49回日本口腔インプラント学会にて発表を行い、デンツプライシロナ賞を受賞した。すでに学術論文は作成済みであり、最終的な追加解析が終了次第、学術雑誌へ投稿する予定である。 動物実験については、尾部懸垂を用いた研究(そのうち1論文はDMJにAccepted(2020))に加えて、オステオン形成モデルマウスを作製してインプラント埋入を行っており、血液供給とオステオン形成の関連性についても興味深い知見が得られている。同時に、インプラント周囲顎骨におけるコラーゲン線維走行異方性を考慮した三次元有限要素解析を進め、日本骨形態計測学会にて発表を行っており、引き続き歯工連携の共同研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
幸運なことに追加のヒト試料が得られたため、この試料の解析を行っているために当初の予定よりも少し研究の進捗は遅れているといえる。とはいえ、ヒトインプラント周囲顎骨に関する学術論文の執筆は終了しており、解析データを反映させるだけであるため、特に大きな問題は発生していない。動物実験については、SHGイメージングを用いた骨コラーゲン線維束の定量的評価が課題であり、解析結果の算出に時間を要したが、IMARISとImageJを用いた角度分布とコラーゲン線維束の口径計測結果は概ね安定して計測できるようになった。現在、インプラント周囲顎骨の血管経路を追加で解析しており、非常に興味深いデータが得られているが、それ故にこちらの進捗状況もやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年3月、当大学にスキャンコメディカル社製µCT50を無事導入することができた。現在は我々のチームが、最大撮像分解能0.5µmの利点を生かして骨小腔、骨細管などの超微小構造の撮像を開始しており、これらの三次元構造を詳細に観察できるのみならず、形態計測を行うことが可能になった。本年度前半は、これまでの試料をこのµCTにて撮像して解析を進めることで、栄養供給経路の解析を行うことが可能となる。さらにメカノバイオロジーを駆使した力学解析結果と併せて鑑みることで、数理解析、材料工学的解析という多角的視点からみた骨の構造的特徴について理解を深めていくことが重要であると考えている。とはいえ、多光子励起位相差顕微鏡を用いた三次元でのSHGイメージングとμCT撮像による三次元立体構築像の位置関係を完全に一致させることは難しく、多くの課題が残っている。骨質が骨強度に与える影響が大であることが認知されてきた今、さらに一歩踏み込んだ力学環境の可視化技術の応用が重要なキーとなってくると確信している。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者である疋田温彦先生との共同研究として行っている2年目であり、引き続き次年度に行う打ち合わせ、消耗品費として使用する予定である。
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