研究課題/領域番号 |
18K09644
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
松野 智宣 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (80199827)
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研究分担者 |
橋本 典也 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (20228430)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨造成 / 骨誘導能 / ハイブリッド骨補填材 / 低結晶ナノハイドロキシアパタイト / 医療用輸液 |
研究実績の概要 |
骨代謝が低下した高齢者や萎縮が進んだ歯槽突起への骨造成に対しては、骨形成能と骨誘導能を併せ持つ自家骨移植や自家骨と骨補填材料を混合した骨造成が行われている。ただし、どうしても自家骨採取に伴う疼痛、腫脹、あるいは感染などの合併症、あるいは移植後の骨吸収などの問題点が残る。しかし、既存の骨補填材は骨伝導能しかないので十分な骨造成が期待できなかった。そこで、本研究では数種の医療輸液を混合してCa/Pクラスターを生成し、それを顆粒状骨補填材料の表面や内部気孔に低結晶型ナノハイドロキシアパタイト(HA)として析出させて、骨誘導能を発揮する二相性のハイブリット骨補填材料を開発することを目的に、それをin vitroとin vivoで評価する。 2018年度は、ウシ焼成骨、HA、β-TCP、炭酸アパタイトの顆粒状骨補填材を擬似体液 (SBF)と、塩化カルシウム、リン酸二カリウムやリンゲル液などの一般的な医療用輸液をCa/P比=1.67に近似するように混合した過飽和なリン酸カルシウム液に1・7日間浸漬して、SEMで各顆粒表面性状の変化を観察した。また、顆粒表面の析出物をFT-IRで分析した。 その結果、SBF浸漬前のHAとβ-TCPの顆粒表面は平滑であったが、ウシ焼成骨と炭酸アパタイトの顆粒表面は微細な凹凸を有し粗造であった。SBF浸漬1日後では、ウシ焼成骨と炭酸アパタイトの顆粒表面の一部を薄く被覆するように結晶性の低い析出物が認められた。SBF浸漬7日後でもHAとβ-TCPの顆粒表面はほぼ平滑のままであったが、ウシ焼成骨と炭酸アパタイトの顆粒表面全体を被覆するように厚みのある低結晶性の析出物が成長していた。さらに、過飽和リン酸カルシウム溶液への浸漬によって、より厚みを持った析出物が観察できた。また、ウシ焼成骨と炭酸アパタイトの顆粒表面の析出物は、FT-IRでHAであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
効率よく低結晶ハイドロキシアパタイトを析出させるための過飽和リン酸カルシウム溶液の作製において、使用する医療用輸液の選定や混合比などの決定で大幅に時間を要した。 結果的にはJ Mater Sci 18: 1799-1808, 2007で報告された方法で過飽和リン酸カルシウム溶液を作製することとし実験を行った。 さらに、使用する骨補填材を2種類から4種類に増やしたので表面性状の比較検討に時間を要した。そのため、次年度から細胞および動物を用いた実験を行っていく。 また、初年度に予定していたナノHAの生成速度の検討は、析出量が非常に微量であることから測定困難と判断し、次年度から行うin vivoで新生骨の形成速度として評価することとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではウシ焼成骨と合成HAの2種類で二相性ハイブリット骨補填材料を作製し、さまざまな評価を行う予定であった。しかし、炭酸アパタイトがインプラント適応として承認されたため、βTCPとともに基板材料に加え、まずは4種類の骨補填材を材料学的に評価した。その結果、ウシ焼成骨と炭酸アパタイトの過飽和リン酸カルシウム溶液浸漬が低結晶ハイドロキシアパタイトを多量に析出させることができた。この結果を踏まえ、次年度からの動物実験にはウシ焼成骨と炭酸アパタイトを用いることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施予する予定であった細胞培養実験を実施することができなかったため、それにあてる予算が次年度使用額に追加された。そのため、次年度は細胞実験と動物実験を実施する。
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