本研究は5種の医療用輸液を混合してCa/Pクラスターを生成し、それを顆粒状骨補填材料の表面や内部気孔に低結晶ハイドロキシアパタイト(HA)として析出させ、骨再生を促進させる二相性のハイブリット骨補填材料を開発することを目的に、in vitroとin vivoで評価した。 2018年度は、4種(HA、βTCP、牛焼成骨、炭酸アパタイト)の顆粒状骨補填材を5種類の医療用輸液をCa/P比=1.67、pH7.8に近似するように混合した過飽和なリン酸カルシウム液に浸漬して、SEMで各顆粒表面に析出物が成長することを確認した。 2019年度は、過飽和リン酸カルシウム液の上清中のカルシウムとリン酸の濃度が経時的に減少し、析出物は球状の粒子として次第に増大することを確認した。また、析出物はXRDパターンから結晶性の低いHA特有のピークを示し、FT-IRスペクトルはリン酸基の吸収バンドとOHの収縮振動を示したことから低結晶HAであった。また、in vitro研究におけるMT3T3-E1細胞を用いた細胞増殖試験と骨分化試験でいずれも有意に促進することも認められた。なお、4種の骨補填材の中で析出物の結晶化を詳細に検討したところ、HAが最も顕著であったことから、in vivo研究においてはHA顆粒を用いることにした。 2020年度のin vivo研究では、ウサギ頭頂骨に直径6mmの全層の臨界骨欠損を作製し、HA顆粒の骨補填材とその表面に低結晶HAを析出させた二相性HA骨補填材顆粒を填塞した。その結果、1か月後の骨欠損部はHA顆粒に比べ二相性HA顆粒は、マイクロCTでの骨密度、新生骨体積率、Villanueva骨染色での新生骨面積率が有意に高値を示した。 以上より、5種の医療用輸液の混合で析出する低結晶HAとHA顆粒を複合させた二相性HA顆粒は、骨再生を促進させることを示した。
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