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2018 年度 実施状況報告書

軟組織疾患の予防・治癒促進に寄与するカルシウムイオン徐放性歯科材料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K09645
研究機関鶴見大学

研究代表者

広田 一男  鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (60563848)

研究分担者 村田 貴俊  鶴見大学, 歯学部, 講師 (10313529)
岡田 彩子  鶴見大学, 歯学部, 助教 (60515584)
花田 信弘  鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードE-カドフェリン / カルシウム / グラスアイオノマー / ラット / Ca9-22細胞
研究実績の概要

本年度は①カルシウム放出ガラスの作成②Ca9-22細胞を用いてCaイオンの細胞接着に対する影響の調査③カルシウムイオン放出ガラスを用いたグラスアイオノマーセメントの炎症抑制効果をラットの動物実験で確認の研究にとりかかった。
①SiO2, Al2O3, CaF2, NaF, AlPO4を原料としてCa放出性フルオロアルミノシリケートガラスを作製した。このガラスはポリアクリル酸水溶液と反応し、グラスアイオノマーセメントを作製できることを確認した。
②細胞でのCaイオンの細胞接着に対する影響の確認を行った。培養したCa9-22細胞をTrypsin-EDTAにより細胞接着を消失させた。その後、PBS溶液に0.1mMCaCl2を加えた溶液で処理したところ、PBS溶液のみの処理に比較して、Ca9-22細胞の大きな固まりが出現した。このことからCa9-22細胞に対してCaイオンが細胞接着に影響を有することが確認できた。
③ラットの上顎臼歯1番に絹糸を巻き付け1週間放置した。1週間後骨吸収を起こし、歯肉部は炎症を有していた。そこで、この歯周炎モデルを本実験で採用可能と判断した。一方、このモデルに適応するグラスアイオノマーセメントの作製を試みた。作製したCa放出性のフルオロアルミノシリケートガラスを用いてCa徐放性の光硬化型グラスアイオノマーセメントを試作した。この光硬化型グラスアイオノマーセメントはCaを放出しながらも歯質に接着し、ラットの臼歯に適応できることを確認した。試作した光硬化型グラスアイオノマーセメントを用いて、8週齢のラットのエナメル質に塗布し、何も処置しない反対側と比較した。ラット口腔内で1か月間の塗布期間を置き、1か月後に骨吸収の程度を比較した。カルシウム放出ガラスを用いた光硬化型グラスアイオノマーセメントを塗布した群では、有意差はないものの骨吸収が抑えられる傾向にあった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Ca放出ガラスの作製は今までのノウハウを生かして僅かに計画遅れはあったが、研究に使用できる材料が作製できた。他に多少の遅れがあった研究過程は二つある。①Caにより細胞接着を回復する実験系で最適なCa濃度を現在のところ見出していない。EGTAでCa接着をキレートで取り、Caを供給して細胞接着を回復するべく最適化Ca濃度を決定する計画を立てた。現在のところ細胞をトリプシンEDTAで一つ一つバラバラにして細胞の再接着を起こす系ではCaの添加により細胞の集合が巨大化することは確認した。したがって、細胞接着にCaイオンが大きな影響を与えていることは確認できた。一方、細胞接着をPBSにEGTAを加えた系で緩慢にはがし、Ca濃度で再接着を起こしたいが,そのような系では最適なCa濃度を見いだせていない。すなわちCa濃度の変動よりも細胞の処理条件の差が大きい傾向にある。
②Caによる軟組織の治癒促進効果を確認するために、ラットの歯にCa放出ガラスを用いたグラスアイオノマーセメントを接着させたい。最初は従来型グラスアイオノマーセメントを作製した。すなわちCa放出ガラスをポリアクリル酸水溶液で硬化させる系である。この系では材料が脆いためにラットの咬合に耐えられず、口腔内で実験期間中維持できなかった。そこで、水溶性アクリルモノマーを含むCa放出型の光硬化型グラスアイオノマーセメントを作製したところラットの口腔内で維持することができるようになり、ラットの口腔内での実験を行えるようになったので、今後研究を加速させたい。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進方策としては、ラットの実験系では歯に接着できるCa放出型組成物を作製できるようになったので、次にネガティブコントロールとの比較系を検討してみたい。これをベースに軟組織の炎症の治癒促進効果について確実な有効性を見いだせるような実験系を多角的に組み立てることにする。
一方、時間のかかる免疫染色試験では、学外での分析委託を活用しながら、時間短縮を可能にするため、自分でも操作スキルを会得し並行して各種の試験ができるようにし、スピードアップを図る。
また、細胞培養試験では、細胞操作に慣れてきているので、PDCAを回しながら、並行して多くの実験条件を検討し効果のある臨界的なCa濃度の特定を急ぎたい。

次年度使用額が生じた理由

全体的に研究の進捗に僅かな遅れがありその分経費の未使用分があった。特に歯質に接着する材料の決定に遅れたことにより、動物実験及びその組織学的検索の実施に遅れが出たことに経費の未使用は起因する。動物実験に使用できる材料は決定し動物実験もスタートしているので、2019年度は遅れを取り戻すべく、動物実験及び免疫染色実験に多角的に取り組むようにする。

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公開日: 2019-12-27  

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