研究課題/領域番号 |
18K09648
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
丸田 道人 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (40507802)
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研究分担者 |
荒平 高章 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (30706958) [辞退]
泉 利雄 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (40248547)
梶本 昇 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (30824213)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リン酸三カルシウム / マグネシウム |
研究実績の概要 |
本研究では、積層ピッチ最小30ミクロンの解像度を持つ3D樹脂プリンタをしようして石膏の薄膜鋳型を作成し、そのシートで作られた石膏薄膜を積層することにより海綿骨のように十分な気孔径と微細構造を有する骨補填材の調製法を確立することを目的としている。 ベータ型リン酸三カルシウムは高温での焼結により容易にアルファ型リン酸三カルシウムに相転移するため、従来の焼結法を用いて内部と外部が連続した微細構造体の調製が困難である問題点があった。本研究では、海綿骨のように十分な気孔径と微細構造を有する骨補填材の調製法を確立することを目的としているため、自己硬化性を持つ材料の使用が必要であった。そこで、我々は、石膏が水との練和により容易に硬化し、リン酸水溶液を用いた水熱処理により容易にハイドロキシアパタイトへと相変換可能な材料であることに着目した。研究の第1フェーズとして、今年度は、石膏からのベータ型リン酸三カルシウム調製法の確立を主に行った。具体的には、半水石膏に対してマグネシウムの添加量を0から最大20mol%まで添加した粉末を調製した。得られた粉体を各種粉液比でそれぞれ練和し、 直径6mm、厚さ3mmのステンレスの割型にいれ1時間初期硬化させた。その後、3種類の酸性リン酸溶液(1MNaH2PO4-1MNa2HPO4-1MNa3PO4)で水熱処理を行い相変換させた。リン酸濃度と水熱処理温度、処理時間を変化させ検討を行った。得られたペレットを粉末X線解析にて物質の同定を行った。上記で調製したペレットのダイアメトラル引張試験を行い硬化体の反応前後での機械的性質を測定した。同時に SEMによる形態観察も行った。生体吸収性骨補填材の体内での吸収は、破骨細胞により生じた酸性環境(pH4程度)での物理化学的溶解が必須であるので、酸性環境下での溶解性の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半水石膏に対してマグネシウムの添加量を0から最大20mol%まで添加した粉末を調製し、硬化後に各種リン酸カルシウム溶液で水熱処理したところ、1Mリン酸水素ナトリウムを用いた200℃での水熱処理で安定的にベータ型リン酸三カルシウムへと相変換されることが明らかになった。通常石膏をリン酸塩水溶液で処理した場合はハイドロキシアパタイトへ相変換されるが、10mol%以上のマグネシウム添加により、ハイドロキシアパタイトへの相変換が阻害され、準安定相であるベータ型リン酸三カルシウムが単相で析出可能なことを明らかにした。10mol%以下ではベータ型リン酸三カルシウム以外にハイドロキシアパタイト、レナナイトが析出していることが明らかになった。10mol%以下のマグネシウム添加でもベータ型リン酸三カルシウムが優位に析出していることも明らかになった。これは、マグネシウムの添加量だけではなく、石膏の溶解性とも関係があることも明らかになった。 石膏へのマグネシウム添加により準安定層のベータ型リン酸カルシウムへの相変換条件が明らかになったことで、テンプレート積層による立体構築で必要な「自己硬化性を持つ材料の使用」が可能になった。また、調製したペレットのダイアメトラル引張試験を行い硬化体の反応前後での機械的性質を測定したところベータ型リン酸三カルシウム単相の試料では1MPa程度の強度が得られることが明らかになった。しかしながら、マグネシウムの添加量が多くなると結晶構造を安定化させることになり、溶解性が著しく低下することが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
研究の第2フェーズとして海綿骨石膏シートの積層条件の最適化を行う予定である。具体的には、積層法による海綿骨様β-TCPの鋳型になる海綿骨石膏シートの調製法の最適化を行う。購入備品である3DプリンタProjet1200を用いて鋳型となる薄膜テンプレートを作成する。 具体的には、前年度の研究結果で明らかになったベータ型リン酸三カルシウムの調製条件を用いて3Dプリンタで作成した鋳型となる薄膜テンプレートのモデルの設計と離型条件の検討を行う。初期検討から、海綿骨モデルの調製にはサインカーブの回転体の組み合わせを用いる予定である。通常、海綿骨のような連通気孔を有する鋳型を作成する場合は、狭小部とアンダーカットがあるために鋳型から離型する時に硬化体が取り出せない。そこで、本研究では連通気孔モデルを数層のテンプレートに分けて作成し、それを離型したあとに積層する手法を検討する。通常、リン酸カルシウムの硬化体では、押出成形やCAD/CAMでは連通気孔が作成できない。 初期検討は、最小の積層ピッチで3DCGにより作成したモデルから薄膜テンプレートを作成することとする。順次積層ピッチを大きく変化させ、積層してその構造を走査型電子顕微鏡にて観察し、検討する。本研究で使用する3DプリンタはSLA方式であるために積層ピッチにより積層縞が現れるため、この評価は必須である。また、得られた鋳型と立体構築されたベータ型リン酸三カルシウムをCAEにて分析し、鋳型(骨補填材)としての応力解析等行う。最終的には、薄膜の鋳型の厚さを順次変化させSEMによる積層多孔体の構造観察を行い最適な積層ピッチを検討する。さらに、海綿骨の骨梁の大きさも順次変更することにより強度を最適化する。
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