研究課題/領域番号 |
18K09652
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 政宣 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (20396500)
|
研究分担者 |
小川 徹 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50372321)
洪 光 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (70363083)
濱田 泰三 東北大学, 歯学研究科, 学術研究員 (50034244)
佐々木 啓一 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30178644)
日原 大貴 東北大学, 大学病院, 医員 (60781292)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | セルロースナノファイバー / 義歯床用材料 / 脱石油歯科材料 / アクリルレジン |
研究実績の概要 |
近年,研究開発が著しい植物繊維を微細化したセルロースナノファイバー(以下CNF)は,高強度・軽量,寸法の熱安定性が良好,化学処理で親水性にも疎水性にもなる多彩な特性を持つ環境負荷の少ない次世代のバイオマス素材である.CNFを歯科用材料として応用することができれば,脱石油歯科材料として多くのメリットが実現できる.この数年は,我が国の研究開発の一つの重点領域として開発が急速に進み,高強度複合材料や添加剤として建築,自動車,食品など様々な領域で応用が試みられている. 本研究では,その先駆けとして義歯床等の歯科材料として頻用されているアクリル系レジンに代わる環境と生体に優しい「脱石油歯科材料」として提案すべく,CNFの義歯床用材料への応用を検討する. これまでに,代表者らはCNF100%加圧脱水ブロックの開発に着手し,CAD/CAMでの切削加工を想定し,より良好な材料学的特性を示す作製条件探索を行ってきた.現在,化学処理を施していないCNFブロックの曲げ強さはアクリルレジンの約2~2.5倍を示し,CNFの解繊度が上がると強度の向上も確認された.これら基礎実験によるCNFの材料特性からも,義歯床用材料や歯冠修復用材料等として応用しうる大きな可能性を有しているといえる.さらに本年度は,口腔内応用を想定し,疎水化したCNF成形体の製作およびその材料学的特性を検討した.具体的には,ブロック作製時のCNF分散溶媒,最適な解繊度,加圧脱水方法の条件等をその物理的・化学的評価をもとに検討した.その結果,CNF製作時の脱水に用いる溶媒や解繊度の違いが材料学的性質に影響を与えることが明らかとなり,また,親水性CNFと比較し疎水化CNF成形体は吸水量が大きく改善したことから,口腔内応用の可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は、ブロック作製時のCNF分散溶媒,最適な解繊度,加圧脱水方法の条件を選定するため疎水化CNFブロック作製の検討を行った。 H24年3月1日付薬食機発0301第5号「歯科材料の製造販売承認申請等に必要な物理的・化学的評価の基本的考え方について」の義歯用材料の評価項目、並びにCNFの新規材料としての特徴を検証するための新たな評価として,以下の評価を種々の条件にて作製したブロックに行った. ①成形体の物理的・化学的の評価:外観,色調,透過性,仕上げ面及び光沢,可塑性,曲げ強さ,曲げ弾性率,吸水性,溶解性 ②切削性(CAD/CAM加工性)の評価 CAD/CAM加工を行い,加工後の表面性状をSEMで観察,寸法精度の評価 ③表面ぬれ性の評価 全自動接触計(PCA-1)を用い,各試料の接触角の測定により表面 ④ぬれ性の評価
|
今後の研究の推進方策 |
H31年度は、以下の項目についてブロックの基礎物性の検討を行う ・唾液吸水による影響(人工唾液浸漬試験を行い,その影響を検証する) ・機械的ストレスによる影響(繰り返し負荷試験を行い機械的性質に及ぼす影響評価する) ・酸,アルカリによる影響 薬液浸漬試験 ・口腔内温度変化による影響 サーマルサイクル試験. さらに生物学的安全性の検証を行う。NFはすでに皮膚への悪影響がないことは確認されているが,CNF100%の歯科材料として使用する際の生物学的安全性をH24年3月1日付薬食機発0301第1号「歯科用医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性評価の基本的考え方について」に従いクラスⅡの医療機器と同様にISO 10993「医療機器の生物学的評価」規格群及びISO 7405「歯科-歯科用医療機器の生体適合性の評価」(JIS T 6001)に準じて評価を実施.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額は、当初計画していた今年度の実験が効率的に進行したことに伴い発生した未使用額であり、平成31年度の研究遂行により使用する予定である。 (使用計画) 今年度の使用予定としては、唾液吸水による影響、機械的ストレスによる影響、酸・アルカリによる影響、口腔内温度変化による影響および生物学的安全性の検証を行う。また、論文制作にかかわる経費、研究打ち合わせ及び研究成果発表旅費としても使用予定である。
|