研究課題/領域番号 |
18K09653
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥山 弥生 東北大学, 大学病院, 助教 (30223697)
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研究分担者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
山田 将博 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (90549982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 支台歯形成技能 / 評価 / デジタルデータ / ニューラルネットワーク / ルーブリック |
研究実績の概要 |
近年,歯科医学教育ではシミュレーション教育の重要性がますます高まっている.しかしながら,歯を切削する技能の評価方法はまだ確立されていない.形状計測値に基づいた歯の切削技能の定量的評価システムの開発にあたり,本年度の研究目的は,学生が切削した人工歯の3Dデータを対象に,ニューラルネットワーク解析を行い,より精度の高い形成技能評価の予測値「predicted score」を算出するアルゴリズムを確立することである.解析の資料は,本学現有のデンタルスキャナーを用いて測定した平成28年度から3年間の学生が切削した合計365本の人工歯のデジタルデータ(STLデータ)と,同一の365本を指導者(3~12名)が採点用ルーブリックを用いて評価した結果,「instructor’s score」である.研究協力者である熊澤逸夫研究室(東工大未来研)において,上記資料を対象に,最適解析方法を求めて画像認識におけるmachine learningの手法を応用し,3D-CNNから解析を開始し,資料の特徴抽出が具体的に進められた.本年度は,3Dデータから断面を作成し,採点用ルーブリックの評価項目「テーパー」を選択し,対象とするデータの次元を減らし,特徴を明らかにする1D-CNNを実践した.その結果,当初55%だった「テーパーBL」の精度は,最終的に69%へと上昇した.また評価項目別,部位別に解析するほうがより高い精度が得られることも判明した.本研究の試料数はニューラルネットワーク解析では少なく,また教師とした解析試料「instructor’s score」にばらつきがあることが今後の検討課題となった.形成技能評価のより高い予測値「predicted score」を算出するアルゴリズムの確立を目途にニューラルネットワーク解析を続ける計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
熊澤逸夫研究室において,昨年に続き,修士学生が最適解析方法を求めて様々な解析に挑戦した.画像認識におけるmachine learningの手法を応用し,3D-CNNから解析を開始し,根気よく解析を続けた結果,試料の特徴抽出に至った. 解析対象が研究室において初めて扱う「人間が支台歯形成を行った支台歯」という,基準点を持たない不定形の三次元形状測定値であることから,当初は解析が難航した.また歯科に限らず,「評価」という難問に関わった研究内容であることも難しさを助長したと思われる. 繰り返し解析を行う中で,解析手法の適否が判明した.この点,既成の解析手法を用いれば,結果が出るという単純な研究ではなかったことから,研究の進捗状況は上記の通りとなった.しかしながら根気よく解析を続けた結果,本年度は,3Dデータから断面を作成し,採点用ルーブリックの中から評価項目「テーパー」を選択し,対象とするデータの次元を減らし,特徴を明らかにしていく1D-CNNを実践することができた. 研究代表者が作成したルーブリック表の内容にさかのぼる課題も判明し,大変意義深い研究成果が得られた.以上,研究は具体的に進んだが,申請書予定からするとやや遅れていると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果から,判明した課題となった点をできるだけ改め,下記の内容で研究を継続する. Ⅰ.ニューラルネットワークによる解析 研究協力者である熊澤逸夫教授(東京工業大学)の指導の下,以下の項目について研究を推進する. ①令和1, 2年度の試料(155本)を追加し,合計520本とし,解析対象の資料数の増加を図る.②高精度3Dデータに対し,ルーブリック評価表のランク分け(3個)の少なさ,評価結果のアンバランスに関する検討等,教師とした“instructor’s score”の内容を見直す.③新しい測定ジグによる高精度3Dデータの取得、④対象とする評価項目の選択(咬合面削除量,形成面の凹凸等)を加えて,指定断面での1D-CNNによる解析を継続実施する.⑤より精度の高い形成技能評価を算出できるアルゴリズムを確立する.
Ⅱ.研究協力者である吉岡勇人准教授(東京工業大学)の指導の下,以下の項目について研究を推進する. ①高精度かつ高速で,測定データの軽量化も満足できる操作がしやすくかつ安定した測定精度を有する三次元形状計測装置の最適設計について検討を重ねる.②これまでの研究成果から,本研究に必要な三次元データの抽出を他社のソフトおよびデバイスを使用せずに,オリジナルのデータ解析のフロー(ハード面、ソフト面)を目指す.③使用する学生あるいは指導者にとってわかりやすいCGの作成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
毎年年度末に予定されていた生体医歯工学共同研究報告会が新型コロナウイルス感染対策のため中止となり、予定していた旅費がかからなかったため、別途必要な物品を購入したが、使用額に残余が生じた。 次年度には、研究計画がさらに円滑に進められるよう配慮する計画である。
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