研究課題/領域番号 |
18K09657
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
金谷 貢 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40177499)
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研究分担者 |
木村 勇雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00169921)
伊藤 圭一 明倫短期大学, 歯科技工士学科, 講師 (60389955)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CAD/CAM / 低エネルギー電子線 / 接着 |
研究実績の概要 |
歯科切削加工(CAD/CAM)用レジンブロックから旋盤によって円盤状試料を削り出す工程において,選定した3種の市販ブロックは非常に欠けやすいことが判明した.とくに把持用治具に近い部分の削り出しにおいて,欠けが顕著に現れることが明らかになった.この問題は被切削物の回転速度と切削工具の送り速度を遅くすることで解決できることが明らかになった.この知見はCAD/CAM用レジンブロックからクラウン等の修復物を削り出す際に有用である. CAD/CAM用レジンブロックに対する水等の接触角の液滴法による測定において,液滴は重力の影響を受けて上下方向につぶれる傾向があることが明らかになった.また,液滴を小さくすることによって重力の影響が現れにくくなること,および液滴が小さくなったことは望遠レンズで拡大撮影することで解決できることが明らかになった. 接触角の測定において,市販のグラフィックソフト(ジャストシステム,花子2019)を用いることにより,印刷した液滴の写真の上で三角定規,ものさしおよび分度器等を用いて作図により測定するよりも,簡便に接触角を測定できることが明らかとなった. CAD/CAM用レジンブロックの比較対照として,それより酸化しやすいと考えられるチタンの円盤状試料に低エネルギー電子線(LEB)照射を行った場合,30回まで照射しても表面の形状変化や酸化は見られなかった.したがって,CAD/CAM用レジンブロックにLEB照射した場合も表面損傷はほとんど無いと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯科切削加工(CAD/CAM)用レジンブロックから旋盤によって円盤状試料を削り出す工程において,選定した3種の市販ブロックが当初考えていたよりも非常に欠けやすく,加工が難しいこと,加えて,とくに把持用治具に近い部分の削り出しにおいて,欠けが顕著に現れることが分かった.その解決のために被切削物の回転速度と切削工具の送り速度を変化させて欠けの生じない切削条件を見いだすことに時間がかかった. CAD/CAM用レジンブロックに対する水等の接触角の液滴法による測定において,液滴は重力の影響を受けて上下方向につぶれる傾向があることが明らかになった.このことは当初予想していなかったため,接触角を正しく測るための液滴の大きさ等の条件を見いだすことに時間を要した.さらに,液滴を小さくすれば重力の影響が現れにくくなることがわかったが,小さな液滴で接触角を測定するために,液滴の精細な写真を撮るための撮影距離とレンズ焦点距離の関係を見いだすことにも時間を要した. 接触角の測定において,当初は印刷した液滴の写真の上で三角定規,ものさしおよび分度器等を用いて作図により測定する予定であったが,市販のグラフィックソフトを用いることにより,簡便に,かつばらつきの少ない接触角測定ができる可能性があることがわかり,その測定法を確立することにも時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
市販の歯科切削加工(CAD/CAM)用レジンブロック3種類から削り出してある円盤状試料をアクリルレジンブロックに埋入後,研磨する. 低エネルギー電子線(LEB)照射により,上で用意したレジン埋入試料に対して,LEB照射を行う.LEB照射無しのものも用意して対照とする. 分析・観察・試験等は以下を行う.電子線マイクロアナライザーによる表面マッピング分析,走査型電子顕微鏡による表面微細構造観察と表面粗さ測定器による表面粗さ測定,液滴法による接触角の測定,市販の接着性レジンにより接着した試料のインストロン型材料試験機によるせん断接着強さ試験.接着強さ試験後の破面観察. 接着強さおよび接着強さ試験後の試料観察から得られたデータをとりまとめ,CAD/CAM用レジンの接着性に対するLEB照射の有効性を判定する.LEB照射が有効である場合はその理由について,CAD/CAM用レジンの有機質成分のレジンと無機質成分のフィラーの表面がどのように改質されることで接着性向上に寄与しているかを,表面分析,表面微細構造観察,表面粗さ測定および接触角測定の各結果から考察する. CAD/CAM用レジンの接着性に関する調査のため,日本歯科理工学会,日本補綴歯科学会および日本歯科技工学会に引き続き出席する.また,これらの学会で成果発表を行う.
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