本研究では大人数の地域在住高齢者を対象に、調査から得られた縦断的データを用いて欠損部位やパターンの変化について検討するとともに、欠損パターンと口腔機能、QOLや全身状態との変化や関連を検討することを目的としている。分析対象のデータには、SONIC研究ですでに調査を終了している対象者の70歳から90歳までの各年齢群のデータに加えて、新たな調査を実施し、2019年度は550名(男性272名、女性278名)のデータ収集を行うことができた。 さらに、令和元年度日本補綴歯科学会関西支部学術大会にて、”高齢期における歯の喪失と咬合支持との関連”というタイトルで、これまでに得られた約2000名の高齢者の歯列データをデータ化し、追跡調査にも参加した約900名のデータを用いて歯の喪失リスク因子について、一般化線形モデルを用いて検討を行った成果について、発表を行った。さらに、国際雑誌であるCommunity Dentistry and Oral Epidemiologyに、”Occlusal support predicts tooth loss in older Japanese people.”が掲載された。同論文の内容を以下に簡潔に示す。これまで収集した口腔検査データから、咬合支持の状態が、歯の喪失に及ぼす影響について検討を行った。ロジスティック回帰分析により、平均プローブ深さ(オッズ比[OR] = 5.70、95%信頼区間[CI] = 2.70-12.04、P < 0.01)および臼歯部咬合支持状態(参照 = Eichner class A; Eichner B1-3、OR = 4.33、95%CI = 1.54-12.17、P < 0.01; Eichner B4 or C、OR = 6.16、95%CI = 1.17-32.44、P = 0.03)は、6年後の4本以上の歯の損失と有意に関連していた。
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