研究課題/領域番号 |
18K09660
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
津賀 一弘 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (60217289)
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研究分担者 |
吉川 峰加 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (00444688)
森 隆浩 広島大学, 病院(歯), 助教 (70760007)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯学 / 咀嚼 / 咬合力 / 舌圧 |
研究実績の概要 |
本研究は、食事時に発揮する日常的な動作により「歯あるいは義歯により、最初の咀嚼時にどれくらいの圧力で食物を粉砕することが可能か」を定量診断する認知症患者においても測定可能な「咀嚼粉砕圧検査」を新たに開発し、その有効性を検証することを目的とする。 2018年度は、JMS舌圧測定器の受圧部である舌圧プローブに咀嚼粉砕圧を槓杆(てこ)作用により減弱させる測定治具として3Dプリンターを用いてABS樹脂製の鋳型を製作し、さらに立体マシニングセンタを用いてポリプロピレン樹脂製の測定治具を製作した。 2019年度では、まずポリプロピレン樹脂製の測定治具およびJMS舌圧測定器を用いて3名の若年男性を対象に咀嚼粉砕圧の測定を試みた。しかし、ポリプロピレン樹脂製の測定治具は咀嚼粉砕圧の減弱効果が少なく、3名とも最大値に達したため個体間変動を検出することができなかった。また、シリコン印象材を緩衝材として使用すると測定治具やシリコン印象材の破壊が生じた。これにより、ポリプロピレン樹脂製の測定治具は咬合圧に耐えうる強度が不足しているとして使用を断念した。そこで、当初考案していたモスキート鉗子を測定治具に使用することとし、作用点部には咬合圧の緩衝材としてシリコン印象材を用いた測定治具を製作した。6名の若年者(男性3名、女性3名)に対して、試作した測定治具を使用して上下顎歯間で発揮される圧を測定した結果、男性3名ではシリコン印象の破壊が生じたが、女性3名の測定値については良好な再現性(右側の級内相関=0.943、左側の級内相関=0.987、P<0.01)を得た。これを用いて、4名の高齢者(男性2名、女性2名)に対して、咀嚼粉砕圧を測定した結果、良好な再現性は得られず(右側の級内相関=-0.179、左側の級内相関=0.180)、男性1名においては測定治具の破壊が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
対象者の咀嚼粉砕圧に十分耐えうる測定治具の開発に想定以上の期間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
JMS舌圧測定器を用いた測定法について、対象者の咀嚼粉砕圧に十分耐えうる測定治具の開発に難渋している。現在までは対象者の咀嚼粉砕圧を数量データとして連続変数にて測定する方法の開発を行ってきた。しかしながら、その方法を確立することが現状では困難なことから段階的に異なる硬さを有する試料を新たに製作し、その試料を粉砕できるか否かで対象者の粉砕圧を質的データとして順序変数にて測定する方法の開発を行うよう研究計画を変更することとする。検査用試料は物性が安定しやすい非食品にて開発する予定であるが、本検査法を認知症の対象者にも適応可能とするため、検査用試料と近似した硬さを有する食品についても探索し、対応させることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
試作した測定治具を大量生産するに至っていないため繰越金が生じた。次年度における検査用試料の開発・製作費用に充てる予定である。
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