研究課題/領域番号 |
18K09661
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
渡邉 恵 徳島大学, 病院, 講師 (40380050)
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研究分担者 |
後藤 崇晴 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (00581381)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金属アレルギー / ケモカイン / 樹状細胞 / 上皮角化細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は,歯科用金属アレルギーの病態形成の中で,粘膜や皮膚の炎症が惹起される過程の分子機構を解析し,歯科用金属アレルギーが関与するといわれる皮膚・粘膜疾患との関連を明らかにすることを目的としている. 樹状細胞(C57Bl6/J雌マウス骨髄より,GM-CSFとIL-4で分化誘導),ケラチノサイト(Pam2.12:マウスケラチノサイト株),T細胞(C57Bl6/J雌マウス脾臓より分離)を培養して塩化ニッケル(NiCl2: Ni)で刺激し,それぞれの細胞が発現するケモカイン,サイトカインをスクリーニング的に解析した. その中で特に,ケラチノサイトおよびT細胞上でセマフォリン3A(semaphorin3A:Sema3A)の発現上昇が認められた.免疫系で機能するセマフォリンは細胞間の相互作用や細胞の移動に関与していることが示されている.これまでの研究でSema3Aは単球やリンパ球の遊走を抑制するが,一方で樹状細胞の移動を促進しているという報告があり,金属アレルギーの病態形成に何らかの役割を果たしていることが予想される.そこでNiで刺激した樹状細胞上に発現するSema3A受容体を探索したところ,plexin-A1の発現上昇を認めた.Plexin-A1を欠損した樹状細胞は,ケモカインに誘導される細胞遊走には変化がないことが明らかになっているため,今後は,このSema3Aとplexin-A1を中心に金属アレルギー発症過程における細胞間ネットワークをより詳細に解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Niで刺激した樹状細胞,ケラチノサイト,T細胞を解析したところ,当初考えていたCXCR3やCCR5等のケモカインよりも,セマフォリン分子の変化が大きかった.ケモカインと同様にセマフォリン分子も樹状細胞の移動に関与していることが報告されていることから,アレルギーの成立機序における細胞間ネットワークを解析する上で,研究は概ね順調に進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
Sema3Aとその受容体であるplexin-A1のどちらもNiの刺激で樹状細胞,ケラチノサイトやT細胞細胞上の発現に変化がみられたことから,金属アレルギーの感作・惹起時の免疫細胞の動態に何らかの役割を果たしていることが強く示唆された.今後は,これらの分子を中心とした細胞間の相互作用を検討していく.具体的には,今年度はトランスウェルを用いた細胞遊走実験,金属アレルギーモデルマウス耳介皮膚上でのSema3Aとplexin-A1の発現検索とsiRNAを用いた発現阻害実験を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
必要物品が予定よりも少額で購入できたため. 差額は次年度の細胞培養資材の購入費に組み込んで使用する予定である.
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