研究課題/領域番号 |
18K09671
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
松尾 浩一郎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90507675)
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研究分担者 |
水谷 幸嗣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60451910)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 周術期口腔管理 / 口腔機能低下症 / サルコペニア / 口腔衛生管理 |
研究実績の概要 |
周術期医療において,術後肺炎予防と早期経口摂取を達成するためには,口腔内環境の器質的改善と機能的回復が不可欠である。本研究では,「周術期における高齢患者での口腔機能と歯周環境に関する術後合併症(咀嚼嚥下障害と肺炎)のリスク因子の解明」を主目的とする。近年,高齢者における術前のサルコペニア(筋力低下)が術後合併症のリスク因子として注目されている。高齢者では,周術期における咀嚼嚥下関連筋群の筋力低下が,術後の経口摂取にも影響を及ぼすことが考えられる。本検討により,周術期における口腔関連のリスク因子が明らかになり,高齢患者に対して,より適切で効果的な周術期口腔機能・衛生管理が行えると考える。 2019年度は,2018年度に引き続き,周術期口腔管理を実施した患者を対象として,口腔機能の状態について評価した。日本老年歯科医学会の診断基準に準じ,口腔機能7項目を測定し,各項目について,両群で平均値を算出した。診断基準に準じ,3項目以上が診断基準に該当した場合に,口腔機能低下症と定義した。また,口腔環境の評価として,Oral Health Assesssment Tool(OHAT)スコアを用いて評価した。胃がんと弁置換の両群間で,口腔機能の測定値,口腔機能低下症の該当者率に差があるか,統計学的に検討した。対象は,胃がん244名,弁置換206名であった。OHF各項目の値は,疾患による差はなかったが,口腔乾燥を除くすべての項目で年代間に有意差を認めた。OHF該当者の割合は,両疾患において,若年群では30%未満であったが,高齢群では,胃がん群で43%,弁膜症群で53%と,両疾患とも高齢群で有意に該当者が多かった。周術期患者においても,一定の割合で,口腔機能が低下している者がいることが明らかになった。今後,周術期における口腔機能の変化や術後全身合併症との関連性について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,研究2年目として,症例のデータを集計していった。2年目終了時点までで,胃がん患者244例,弁膜症患者206例と順調にデータを集計している。術後のデータ採取に際して,当初予定していた症例数には達していないが,データ採取方法を共同研究者とともに確認することで,データ採取も問題なくなったと考える。また,集めている研究データは,予想していたような結果としてでてきているため,研究計画も現在の計画に沿った形で進めていけると考える。2020年はデータ解析と成果のまとめを中心に行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
周術期における口腔機能の変化について,今後もデータを蓄積していく予定である。また,術前の全身のデータとして,全身の筋肉量と筋力および栄養の情報についても今後はデータを集めていく予定である。集まったデータは逐次解析を行い,国内,国外の関連学会で積極的に発表していく予定である。日本老年歯科医学会,Europe College of Gerodontology,European Society of Swallowing Disorderなどで発表予定である。また,その成果を論文としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:今年度は,概ね予定通りであったが,消耗品の購入に関して予算よりも少ない見積での購入となったため,若干の次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度は積極的にデータ採取を行っていく予定である。また研究成果を国内および国際学会で発表し,論文も積極的に発表していく予定でもある。計画通り進めば翌年度分として請求した助成金の予算に見合った支出が予想される。
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