研究課題
80歳で20歯を有する高齢者、いわゆる8020達成者の割合は近年で急激に増加した。しかしながら一方で20歯以上を有し歯列・咬合の形態的な健全性を維持しているにも関わらず、十分な咀嚼機能を発揮できない『形態と機能の乖離』した高齢者を診察する機会も少なくない。本研究では高齢者の咀嚼機能における『形態と機能の乖離』が、咀嚼筋量の減少と筋力低下、すなわち咀嚼筋のサルコペニアに拠るとの仮説を基に、咀嚼筋のサルコペニアと現在歯数、咀嚼機能および心身機能との関連をコホート研究にて検証する。さらに『形態と機能の乖離』を予測する咀嚼筋のサルコペニアの病態のしきい値を検討する予定である。2019年度から2021年度の3年間は新型コロナウイルス感染拡大のため全日程が中止となり、新規の検診データは得られなかったが、2022年度は4年ぶりに検診が実施できた。今年度は調査フィールドである岩手県花巻市大迫町の亀ケ森地区において延べ3回(2022年11月7日、11月14日、2023年1月25日)の検診を実施した。検診対象は50歳以上の62名(男性25名、女性37名、平均年齢65.2±8.7歳)であった。検診項目は人口統計学的指標、医学検査データ、頭部MRI撮影、および口腔保健データ(残存歯数、歯周組織検査、口腔関連QOL、主観的咀嚼機能の調査、デンタルプレスケールを用いた咬合力検査、グミゼリーを用いたグルコース溶出法による咀嚼能率検査、細菌カウンタを用いた口腔内細菌数検査、口腔湿潤計ムーカスを用いた口腔湿潤度検査、およびJMS舌圧計を用いた舌圧測定など)である。取得したデータについては現在集計中である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染拡大のため、2020年度、2021年度の2年間検診を実施できなかったため。
研究計画に変更はなく引き続き新たな対象者のリクルートと調査を実施しコホートの拡大を図るとともに、これまでのデータベースを基に解析を進める。具体的には、2023年度は2022年度と同様に、被験者の選択、歯科・医科学検査を継続し被験者の増員を図るとともに測定項目のデータベースを追加する。2023年度は5回の検診を予定しており、この検診に参加するおよそ120名の対象者に研究内容について説明を行い、同意を得られたものに対し、口腔内診査・咀嚼機能検査、要介護発生など調査を行う。さらに医科データとの関連を、多変量解析にて検討しその成果を国内外の学会にて発表する。解析内容は①地域高齢者における歯列状態と最大咬合力、および主観的・客観的咀嚼能力との関連の横断解析、②咀嚼筋量と最大咬合力、および主観的・客観的咀嚼能力との関連の横断解析である。
2019年度から2021年度まで予定していた検診ができず、未使用額が累積していた。今年度は検診が再開できたが、それまでの未使用分があるため次年度使用額が生じた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Gerodontology
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