研究課題
80歳で20歯を有する高齢者,いわゆる8020達成者の割合は近年で急激に増加した.しかしながら一方で20歯以上を有し歯列・咬合の形態的な健全性を維持しているにも関わらず,十分な咀嚼機能を発揮できない『形態と機能の乖離』した高齢者を診察する機会も少なくない.本研究では高齢者の咀嚼機能における『形態と機能の乖離』が,咀嚼筋量の減少と筋力低下,すなわち咀嚼筋のサルコペニアに拠るとの仮説を基に,咀嚼筋のサルコペニアと現在歯数,咀嚼機能および心身機能との関連をコホート研究にて検証する.さらに『形態と機能の乖離』を予測する咀嚼筋のサルコペニアの病態のしきい値を検討する予定である.2019年度から2021年度の3年間は新型コロナウイルス感染拡大のため全日程が中止となり,新規の検診データは得られなかったが,昨年度は4年ぶりに検診が実施できた.今年度は調査フィールドである岩手県花巻市大迫町の内川目地区の住民を対象に,大迫保健福祉センターにおいて4回(2023年10月19日,11月2日,12月18日,2024年1月10日)の検診を実施した.50歳以上の対象者977名中,参加者は93名(男性41名,女性52名,平均年齢70.7±8.9歳)であった.検診項目は人口統計学的指標,身体計測,医学検査データ,頭部MRI(総合花巻病院にて事前撮影,2023年8月22日~12月7日),および口腔保健データ(残存歯数,歯周組織検査,口腔関連QOL,主観的咀嚼機能の調査,デンタルプレスケールを用いた咬合力検査,グミゼリーを用いたグルコース溶出法による咀嚼能率検査,細菌カウンタを用いた口腔内細菌数検査,口腔湿潤計ムーカスを用いた口腔湿潤度検査,およびJMS舌圧計を用いた舌圧測定など)である.取得したデータについては現在集計中である.
すべて 2023
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Neurology
巻: 101(10) ページ: e1056-e1068
10.1212/WNL.0000000000207579