研究課題/領域番号 |
18K09678
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
秀島 雅之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (50218723)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA) / 口腔内装置(OA;Oral Appliance) / 下顎前方移動量 / マランパチ分類 / 側方顔貌 / Eライン / 睡眠検査 |
研究実績の概要 |
近年閉塞性睡眠時無呼吸症(Obstructive Sleep Apnea: OSA)は,日中傾眠による仕事の能率低下,運転事故等で社会生活に支障を来すだけでなく,生活習慣病をも悪化させるため,社会的な注目度も高まっている.我が国では重度のOSAには持続陽圧呼吸(CPAP),軽度~中等度のOSAには口腔内装置(Oral Appliance: OA)が保険適用されるが,重度のOSAにもOAは有効な場合もあり,医科でも歯科のOA療法の有用性が認められつつある. しかしOAは全ての症例に有効なわけではなく,奏功するか否かは治療を行ってみなければ,分からないのが現状である.CPAP使用が困難なため,医科より歯科にOA療法の依頼があり,OAを適用したが効果を得られず,再度CPAP適用を医科に依頼するのは時間と経費を要し,患者・医療従事者にとって望ましくない.OA治療が奏功するかを事前に見極められれば,個々の症例に応じてCPAPとOAのいずれが最適かを判定でき,よりテイラーメイドな治療が可能となるため,その果たす役割は大きい. 本研究では術前の診査,問診,簡便な計測値より,治療効果を予測するモデルを構築し,その臨床応用を目指すとともに,その有用性を新規開発中の非接触の赤外線センサーを利用した計測装置を使って検証し,治療効果の予測モデルの確立を目的とする. 2~3年次はOAを装着したOSA患者の診療プロトコールより,治療効果の有無をアウトカムとした多変量解析より構築した予測モデルについて検証を行った.評価項目は性別,年齢,術前・術後AHI,最大下顎前方移動量,マランパチ分類スコアー,側方顔貌のEライン分類等で,OA装着後にAHI<5もしくはAHIが50%以上減少した場合を治療効果ありとした. 3年次には研究成果を第19回日本睡眠歯科学会,細胞誌等に公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.データ収集:OAを装着したOSA患者より収集した初年度のプロトコールを見直し,改訂を図り,さらにデータ収集を続けた. 症例選択の基準は年齢20歳以上,骨植の良い残存歯が20本以上とし,術前評価後に歯科処置の予定者,痛みや開口障害を伴う顎関節症,重度の歯周疾患,精神疾患を伴う症例等は除外した. 2.データ解析:評価項目として性別,年齢,術前・術後AHI,最大下顎前方移動量,マランパチ分類スコアー,側方顔貌のEライン分類等を選択した.治療効果有りの判定は,術後にAHI<5もしくはAHIが50%以上減少した場合とした.治療効果の有無をアウトカムとした多変量モデルを導入し,予測モデルの構築を図った. 3.構築モデルの検証:多変量モデルより構築した現段階の予測モデルを使用し,新規症例のOA効果を予測し,OA装着後の睡眠検査による効果判定結果と比較して,その妥当性,一致度を検証し,専門学会,学術誌等で公表した.
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今後の研究の推進方策 |
1.構築モデルの検証: 改訂した予測モデルを運用し,新規患者のOA治療効果を予測するとともに,新規開発の非接触計測器,従来型簡易評価装置等で呼吸,睡眠状態を測定し,治療効果を検証する. 2.モデルの妥当性,実用化の検討:新規患者データを用い,モデルの再現性を検討する.さらに医科・歯科において適応症の見極め基準として運用を図る. 以上よりOSA症例の術前の簡便な診査より策定した,OA治療効果の予測モデルを運用し,新規開発の非接触方式の簡易計測・従来型睡眠検査装置で効果を判定し,予測モデルの確立と検証,非接触評価装置の実用化を目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は前年度からのコロナ禍が治まらず,4~6月は新患外来が休止し,データ収集,モデル検証が進まず,プログラムの発注も一部見合わせとなった.次年度は最終モデル作成のためのプログラムの発注,研究経過報告発表等を予定しているため,今年度の予算の多くを次年度に充当した.
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