近年閉塞性睡眠時無呼吸症(Obstructive Sleep Apnea: OSA)は,日中傾眠による仕事の能率低下,運転事故等で社会生活に支障を来すだけでなく,生活習慣病をも悪化させるため,社会的な注目度も高まっている.我が国では重症のOSAには持続陽圧呼吸(Continuous Positive Airway Pressure; CPAP),軽症のOSAには口腔内装置(Oral Appliance: OA)が保険適用されるが,重度のOSAにもOAは有効な場合もあり,医科でも歯科のOA療法の有用性が認められつつある. しかしOAが奏功するかは治療を行ってみなければ分からず,CPAP使用が困難なため医科より歯科にOA作製依頼があったものの,効果が得られず再度,医科にCPAP療法を依頼するのは時間と経費を要し,患者・医療従事者にとって望ましくない.OA治療が奏功するかを事前に見極められれば,各症例に応じたCPAPとOAのいずれが最適かを判定でき,よりテイラーメイドな治療が可能となるため,その果たす役割は大きい. 本研究では術前の簡便な診査,問診,検査値より,治療効果を予測するモデルを構築し,その臨床応用を目指すとともに,その有用性を精度の高い計測装置を使って検証し,治療効果の予測モデルの確立を目的とする. 3~5年次はOAを装着したOSA患者の診療プロトコールより,治療効果の有無をアウトカムとした多変量解析より構築した予測モデルについて検証を行った.評価項目は性別,年齢,術前・術後AHI,最大下顎前方移動量,マランパチ分類スコアー,側方顔貌のEライン分類等で,OA装着後にAHI<5もしくはAHIが50%以上減少した場合を治療効果ありとした. 4年次には研究成果を第20回日本睡眠歯科学会,英文誌等に,5年次には医療系の和文専門誌に公表した.
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