研究課題/領域番号 |
18K09696
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岩城 麻衣子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (70544500)
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研究分担者 |
金澤 学 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (80431922)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デジタルデンチャー / 全部床義歯 / カスタムディスク法 / 前向き臨床 / 費用対効果 / 患者満足度 / 口腔関連QoL |
研究実績の概要 |
デジタル技術の応用は,義歯製作の煩雑なステップを簡略化し,義歯製作に関わる時間を短縮できる可能性がある.当分野では既製人工歯を埋入した義歯床用レジンディスクを患者毎に製作し,義歯を切削加工する新たなデジタル全部床義歯製作法 (以下,カスタムディスク法)を開発した. 本研究の目的は,前向き介入研究によりカスタムディスク法の患者満足度と製作に関わる費用を明らか にすることである. 本研究デザインは前向き介入研究とした.参加者は東京医科歯科大学歯学部附属病院義歯外来を受診した上下顎全部床義歯の製作を希望する上下顎無歯顎患者20名とし,参加者にはカスタムディスク法を用いてデジタル全部床義歯を製作した.3回目の来院時に完成義歯を通法に従い装着した.義歯装着後は調整を行い,疼痛なく使用できることを確認した.患者満足度は 100mmVASを用いて,初回来院時と義歯調整終了後1ヶ月後に測定した.また,初回の来院から義歯調整終了までの各行程に歯科医師,及び歯科技工士が費やした時間と材料の使用量を記録した.費用は,人件費と材料費を含む直接費用のみを算出した.統計解析は,介入前と介入後の患者満足度をMann- Whitney U 検定を用いて,人件費と材料費を Wilcoxonの符号順位検定を用いて,それぞれ2群間を比較した(有意水準5%). 介入後の患者満足度は,介入前の患者満足度より有意に上昇した.人件費は材料費に比べ有意に低かった.この総費用は当分野で行った先行研究により明らかになった従来法の全部床義歯製作に関わる費用よりも低かった.デジタル用材料は今後改善・改良が進むことで安価になる可能性があり,材料費はさらに減少する可能性がある. 以上より,カスタムディス ク法によるデジタル全部床義歯は患者満足度を有意に改善し,また従来法よりも低いコストで製作できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,東京医科歯科大学歯学部附属病院倫理審査委員会に承認され(承認番号:D2017-016),UMIN臨床試験登録システムにも登録済みである(UMIN登録番 号:000027708).2021年5月現在,予定人数の20人の患者についてデジタル全部床義歯の装着が終了し,20名は1ヶ月後の評価が終了,18名は6ヶ月後の評価が終了し,あと1名で全員終了予定である.また,1名は全身状態の悪化により来院が不可能となったため,1ヶ月評価終了後ドロップアウトとなった. 2020年2月~12月にかけては義歯製作を開始してからのペースにやや遅れが生じていたが,この理由として,一つは試適用義歯を製作する3Dプリンタの故障により修理や代替の方法として シッピングに時間を要したこと,もう一つは新型コロナ感染症による社会情勢の影響によることがある. 今回新規開発を行ったカスタムディスク法の運用については,研究開始当初試行錯誤に時間を要したが,現在ではスムーズに運用が進んでいる. また,臨床評価も順調に遂行できている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年6月開催の日本補綴歯科学会学術大会にて,1ヶ月評価終了時の費用対効果について口演発表を行うと同時に海外ジャーナルへの論文発表投稿準備を行なっている.今年度中に被験者全員の6ヶ月評価が終了する予定であるため,今後は本研究成果の内容について,国内外に広く発信していく予定である.また,本研究にて臨床応用可能であることが明らかとなったカスタムディスク法によるデジタルデンチャー製作について,無歯顎のみならず部分欠損症例への応用を検討中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により,国内外での会議や国際学会が全て中止となった,また,同理由による臨床研究の一時中断により,論文発表が遅れたため,それらの費用として充備していた分を今年度分として使用する.
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