研究課題
これまで,咀嚼機能の評価において咀嚼能率検査,顎運動検査,アンケート調査などが行われてきた.しかし,いずれも主観的な評価であるか診療室での評価であり,普段の食事における咀嚼を客観的に評価するものではない.我々は耳にかけるだけで咀嚼運動を計測可能なウェアラブル型の咀嚼行動モニタリングシステム(バイトスキャン)を開発している.本研究課題では,この新型咀嚼計を用いて普段の食事における咀嚼行動を観察し,習慣的な咀嚼回数,補綴治療による咀嚼行動変容,要介護高齢者における調整食の選択と咀嚼行動の実態を明らかにすることを目的とする.まず,我々は高齢者を含む成人の咀嚼行動を検討した.その結果,咀嚼回数は,男性が女性と比べて有意に多かったが,年代別の違いは見られなかった.一方,咀嚼能率は高齢者は有意に小さく,女性は有意に小さかった.また,咀嚼行動と咀嚼能率の間には有意な関連が認められなかった.次に,地域在住自立高齢者の咀嚼行動を検討した結果,口腔機能低下や咀嚼機能低下を呈する高齢者と,健常な高齢者との間には,咀嚼回数の有意な違いは認めなかった.一方で,口腔機能低下症の高齢者において,咀嚼テンポが有意に低下していることが示された.これらの結果は,咀嚼機能が低下した高齢者においても咀嚼回数を増やすことで代償するような行動は見られず,食塊形成が不良となっている可能性があり,窒息や栄養摂取不良を起こすリスクがあると考えられた.さらに,欠損歯列を持つ2名の高齢者を対象に補綴装置装着前後の咀嚼行動を測定して比較した.その結果,咀嚼回数の減少や咀嚼テンポの向上などの変化が見られた.以上より,補綴装置の装着が咀嚼行動にも影響を与える可能性が示唆された.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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