研究課題/領域番号 |
18K09706
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐原 資謹 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (40206008)
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研究分担者 |
道脇 幸博 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (40157540)
千葉 俊美 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (40254784)
橋本 卓弥 東京理科大学, 工学部機械工学科, 講師 (60548163)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嚥下 / CT / 筋電図 / マノメーター / シュミレーションモデル |
研究実績の概要 |
嚥下を支配するバイオメカニズムの解明、あるいは診断・治療法の新規開発や治療の予測を行うことを目的とし、CTや嚥下造影(VF)の(2次元)画像を基に、生体データを数理モデル化し、3次元嚥下シュミレーションモデルを構築し、コンピュータ・シミュレーションにより評価をおこなうことを試みた。 ①320列面検出型CT (320-ADCT) 使用により、時間分解能が10fr/sec、空間分解能0.5 mmの高精度・高分解能の3次元画像を取得し、この画像をもとに食塊や軟組織をトレースし嚥下シュミレーションモデル(生体モデル)を構築した。 ②嚥下運動に関わる筋の動態は、嚥下時の舌骨の運動軌跡の計測を基に、筋トルクを算出し、筋張力および筋長の変化を推定することで、嚥下に関与する骨格筋の筋骨格モデルを構築した。 ③ 嚥下運動は極めて短時間(約2秒)で終了するため、現在は解剖学的形態やその位置変化情報のみを利用しているが、咽頭圧と筋活動の時空間的変化を同時計測し、時間軸(潜時)の導入にすることで、器官の運動との関係が推測可能となり、脳幹反射モデルと結合できる可能がひらけた。 嚥下運動は、末梢器官における複雑な反射の連鎖である(咽頭期と食道期)と同時に、随意運動の側面(口腔期)も持っており、神経系(脳)の機能を備えた、統合型嚥下シュミレーションモデルの構築が必要とされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嚥下運動に関与する器官の形状ならびにその動きが複雑であることが、嚥下を支配するバイオメカニズムの解明、あるいは診断・治療法の新規開発や治療の予測を行う上で大きな障壁となっている。近年、CTや嚥下造影(VF)の(2次元)画像を基に、生体データを数理モデル化し、3次元嚥下シュミレーションモデルを構築し、コンピュータ・シミュレーションにより評価をおこなう手法が確立された。 ①320列面検出型CT (320-ADCT) 使用により、時間分解能が10fr/sec、空間分解能0.5 mmの高精度・高分解能の3次元画像を取得し、この画像をもとに食塊や軟組織をトレースし嚥下シュミレーションモデル(生体モデル)を構築した。が、軟組織、とりわけ気道、咽頭・喉頭の細部、や食塊の描出は困難で可視化が未だ充分でない。 ②嚥下運動に関わる筋の動態は、嚥下時の舌骨の運動軌跡の計測を基に、筋張力および筋長の変化を推定し、嚥下に関与する舌骨上筋群の筋骨格モデルを構築した。体の表面から深い位置に存在する筋(舌骨下筋群)では、表面電極では筋活動の記録が困難であるため、多チャンネルの筋電図計測と解析により、筋活動の推測を試みた。これにより、嚥下時の喉頭蓋の運動軌跡の計測により、舌骨下筋群の筋骨格モデルの構築、評価が可能になると考えられる。 ③ 嚥下運動は極めて短時間(約2秒)で終了するため、現在は解剖学的形態やその位置変化情報のを利用している。咽頭圧と筋活動の時空間的変化を同時計測し、時間軸(潜時)の導入により、器官の運動と嚥下圧との関係が推測可能となり、脳幹反射モデル等と結合でした統合型嚥下シュミレーションモデルの構築が可能となると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
嚥下を支配するバイオメカニズムの解明、あるいは診断・治療法の新規開発や治療の予測を行うことを目的とし、CTや嚥下造影(VF)の(2次元)画像を基に、生体データを数理モデル化し、3次元嚥下シュミレーションモデルを構築し、コンピュータ・シミュレーションにより評価をおこなうことを継続して試みる。 生体モデル、骨格筋モデル、脳幹反射モデルなどのモデルの統合をはかることで機能統合型嚥下シュミレーションモデルを構築する。また、シュミレーションモデルのパラメターの標準化/最適化により、モデルの一般化と妥当性の検証をおこなう。①正常嚥下のバイオメカニクス:嚥下の各々の過程について、1)舌運動のバイオメカニクス研究、2)咽頭壁運動、食道入口部、声門部のバイオメカニクス研究に使用できるモデルの構築、評価。 ②誤嚥のバイオメカニクス:Parkinson病、筋ジストロフィー患者から、形態およびCT/MRI画像および自発嚥下時の機能データ(嚥下音、筋電図、咽頭圧)、さらには他の脳データfunctional MRI(fMRI)のデータを収集行い、モデルのシュミレーション結果との比較をすすめる。病状の進行状況の追跡により、各々の疾患の診断基準の標準化、治療結果の予測、嚥下障害の神経・筋機構の解明などが可能になると思われる。 以上に加え、現在320列面検出型CT (320-ADCT) 使用による高精度・高分解能の3次元画像を取得後、食塊や軟組織を手作業でトレースにより嚥下シュミレーションモデル(生体モデル)を構築しており、かなりの手間を必要とする。この部分AIの導入により、自動画像処理化をはかり効率化することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
筋電図記録のために当初予定していた、“多チャンネル3極同心円電極筋電図装置”の記録電極“3極同心円電極”がノイズが大きく、予想した性能が出ないことが判明した。多チャンネル筋電図記録(単極)と解析を併用することで対応することとなったが、最終的な仕様変更までに手間取り、次年度使用額が生じた。
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