最終年度は、実際の口腔機能向上プログラムを実施した介入研究を行い、介入群における口腔機能の向上に関して定量分析を行い、非接触・装着プログラムによる介入効果を検討した。介入研究の対象者は、通所リハビリテーション施設利用者の要支援・要介護者のうち、事前アンケート調査で口腔機能低下症が疑われる者48名とした。通所施設でのスカッチュ居宅でのトレーニングを行い、介入開始時、3か月後、6ヶ月後に口腔機能と全身機能に関する検査を実施した。口腔機能は口腔機能低下症に関する項目、全身機能の検査としては 肺活量、握力、ファンクショナルリーチ、5m 歩行速度、5m歩行歩数とした。 その結果、口腔機能低下症該当者は28人に低減した。また、口腔水分値と残存歯数を除く全項目について有意な改善が認められた。特に、口腔機能向上プログラムを多く実施した群では改善が顕著であった。全身機能の測定では、肺活量、5m歩行速度、5m歩行歩数の有意な改善が認められた。肺活量については、3か月の実施で介護度の軽い対象者に有意な改善を認めたが、6か月後に更なる改善は認められなかった。握力やファンクショナルリーチについては、有意な変化は認められなかった。 また、口腔機能と全身機能の関連性を検討した結果、舌圧と肺活量でr=0.425842 の相関係数が認められた。介護度の軽い群では、6か月後の評価でr=0.711879と高い関連が得られた。 以上の結果から、非接触・装着型システムを用いた口腔機能向上プログラムでは、舌・口腔周囲筋を効果的に鍛え、発音や嚥下などの口腔機能の向上に有効であると考えられる。 また、本トレーニングは肺活量や歩行速度などの全身機能の向上にとっても有効であるとともに、口腔機能の向上が全身機能の改善に繋がる可能性が示唆された。
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