研究課題
近年、超高齢社会の到来により、生涯歯科治療が重要視されている。無歯顎患者に対するインプラント治療も一つの選択肢であるが問題点も多い。骨質や全身疾患の観点から考えると純チタン金属の使用にはやや不安感が残る。ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)はそのX線透過性や人体骨と相似する弾性等の特性から整形外科および歯科用インプラントで使用されているものの、その相対的に低い生体適合性および特殊構造のない表面からオッセオインテグレーションの短期化が難しいと評価される。申請者は,これまで純チタン金属及びチタン合金へ濃アルカリ修飾を施すことで,各種金属表面にナノ構造を析出させ,親水性を付与し,ラットの骨髄間葉細胞の硬組織分化誘導能を向上させることを明らかにした。そこで,本研究ではチタンをコーティングしたPEEKへ濃アルカリ処理を施すことにより高齢者に対する生涯歯科治療を重要視した新規インプラント材料の創製を目指す。本研究では、チタンナノ構造を析出したPEEK材料をインプラント体として生体に埋入した場合、SD系ラットのインプラント周囲骨組織の評価を中心とする。SD 系ラットの大腿骨骨髄から間葉系幹細胞を単離し,チタンナノ構造を析出したPEEK材料上にこれを播種・培養し,細胞接着能,細胞増殖能,骨芽細胞への分化能について評価する。また,ラット大腿骨にチタンナノ構造を析出したPEEK材料を埋入し周囲骨組織の評価をMicroCT分析および免疫蛍光染色で行い,オッセオインテグレーションの評価を行う。2019年度はPEEK材料への純チタン金属のコーティングおよびナノ構造の形成に成功したので、試料を大量生産し、in vitro評価を行った。無処理の群と比較して、骨髄細胞の多くの接着および硬組織分化誘導能の向上が認められた。インプラント学会にて発表予定である。
2: おおむね順調に進展している
in vitro評価まで終了した。来年度はin vivo評価の予定である。
八十島プロシード社と協力し、in vivo用の試料の発注を開始している。今後はin vivo評価を行うとともに論文作成に取り組む。
2019年度末にin vivo評価用の試料を発注したので年度明けの支払いとなったため
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The Journal of Japan Association of Oral rehabiitation
巻: 32 ページ: 32-45