研究課題/領域番号 |
18K09715
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 特任助教 (00632423)
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研究分担者 |
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40548202)
樋田 泰浩 北海道大学, 大学病院, 准教授 (30399919)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍血管新生 / 腫瘍血管内皮細胞 / 転移 |
研究実績の概要 |
腫瘍血管は,がんに栄養や酸素を供給し,がんの増大や転移に重要である.腫瘍血管を裏打ちする腫瘍血管内皮細胞は,様々な異常性を示し,がんの悪性化に寄与することがわかってきた.最近,われわれは腫瘍血管内皮細胞がBiglycanを分泌してがん細胞の血管内侵入を促進し,転移促進に関与することを報告した.しかし,がん細胞の血管内侵入後における腫瘍血管内皮細胞の役割については不明である.そこで,がん細胞が血管内で細胞塊を形成すること,腫瘍血管内皮細胞に接着しやすいこと,また腫瘍血管内皮細胞が様々な接着因子や増殖因子を高く発現することなど,これまで得られてきた腫瘍血管内皮細胞の異常性に関する知見をふまえ,がん細胞が原発巣から転移先臓器へと移動する血液中において,腫瘍血管内皮細胞ががん細胞と接着することで周囲のストレスから保護し,転移巣形成に寄与すると仮説を立てた.本研究では,腫瘍血管内皮細胞の転移における様々な役割を分子基盤とともに解明することを目的とした. 今年度は,がん細胞と血管内皮細胞の細胞塊形成について解析した.非接着性プレートを作製し,その上でがん細胞と血管内皮細胞を共培養してスフェロイドが形成されるかどうか観察した.血管内皮細胞としては正常血管内皮細胞,腫瘍血管内皮細胞(高転移・低転移腫瘍由来)を用い,がん細胞として上皮系・非上皮系の高悪性度・低悪性度のCell lineを用いた.いずれでもスフェロイドが形成された.用いた細胞を蛍光ラベルして観察したところ,腫瘍血管内皮細胞の違いにより局在に違いがあることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に沿って概ね順調に研究が進んでいるため.非接着性プレートにおける共培養系を確立することができ,スフェロイドの形成も観察された.また,腫瘍血管内皮細胞の性質の違いにより,そのスフェロイド内の細胞の局在に違いがあるという興味深い結果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
In vitroのみならず,in vivoにおいてもスフェロイド様の細胞塊が観察されるかどうか,担癌マウスの腫瘍や心臓を用いて組織切片を作製し,H-E染色や組織免疫染色により検討する.様々な腫瘍血管内皮細胞を用いてがん細胞と共にスフェロイド形成させ,非接着状態におけるがん細胞の生存能,増殖能,接着能をin vitroで解析し,血管内皮の役割について検討する.さらにマウス尾静脈からスフェロイドを静注し,肺などの遠隔臓器への生着ならびに転移巣形成の違いをIVIS Spectrum等を用いてイメージングし,in vivoで評価する.腫瘍血管内皮細胞が発現する分子で,上記スフェロイド形成や転移促進に関与する分子を同定する.ヒト腫瘍組織においても実際に同様の所見が得られるか,様々な癌種のがん患者手術摘出標本を用いて,上記で着目した分子の血管における発現や局在を組織学的に検討し,さらに臨床病理学的に検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
In vivoにおいてスフェロイド様の細胞塊が観察されるかどうかの検討が遅れたため.In vitroのみならず,in vivoにおいてもスフェロイド様の細胞塊が観察されるかどうか,担癌マウスを作製し,腫瘍や心臓の組織切片を作製し,H-E染色や組織免疫染色により検討する予定である.
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