研究課題/領域番号 |
18K09721
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
山近 英樹 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター(臨床研究部), 歯科医師 (10294422)
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研究分担者 |
辻極 秀次 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70335628)
森谷 徳文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60467751)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨 / 骨粗鬆症 / 顎骨壊死 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、ゾレドロネート投与によりマウスのT細胞分画が影響を受ける事を明らかにしてきた。またマウス下顎骨において、ゾレドロネート投与の影響を受けて新生される骨は過剰な石灰化を示し結晶化度(crystallinity)を低下させ、コラーゲン構造の完全性(collagen structural integrity)を減少させることを示した。 これらの、結果を踏まえてまずマウスにおけるゾレドロネートが与えるT細胞分画への影響の精査をおこなった。その結果ビスフォスフォネート投与によりマウス大腿骨骨髄中のRunxが減少することが確認された。さらにこのときにCD3陽性細胞をヘルパーT細胞へ分化誘導するTh-PoKタンパクの発現が確認された。そこでマウス胸腺および末梢血のCD3陽性細胞を、CD4およびCD8のTリンパ球分画をフローサイトメーターにて確認すると(1)CD4+/CD8-細胞はゾレドロネート投与により胸腺および末梢血中で増加すること。(2)CD4-/CD8+細胞はゾレドロネート投与により胸腺で増加し末梢血中で減少すること。(3)CD4+/CD8+細胞はゾレドロネート投与により胸腺で減少すること。(4)CD4-/CD8-細胞はゾレドロネート投与により胸腺で増加することがわかった。 すなわちゾレドロネート投与により末梢血中のヘルパーT細胞が増加、細胞障害性T細胞が減少しているものと思われた。さらに血清中のサイトカイン解析よりは、ゾレドロネート投与によりIL-1beta, TNF-alpha, IL-17が対照群に比較して減少しておりこれの結果は顎骨壊死の病態の解明につがなると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症対策で、感染症予防のため研究組織間の移動が制限され円滑な研究の支障となることがあった。 また細胞の動態の解析については、血球系細胞の培養系にてビスフォスフォネートやDmab投与 の影響を検証したが、FACS解析およびELISA解析に十分な細胞数を得ることがなく培養実験の条件設定に難渋した。 研究成果の発表については、本年度は最終年度のため研究成果を米国口腔外科学会にて発表予定であったが、新型コロナ感染症対策のため海外の学会参加は今後もめどが立たない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)これまでのマウスへのゾレドロネート投与実験により骨基質コラーゲンの架橋構造の変化をラマン解析にて確認し同様の変化は結合組織コラーゲンにも起こっていると考えている。そこでゾレドロネートおよびDmab投与マウスから結合組織を採取して、ラマン解析により基質タンパクの架橋構造の変化を解析する。尚、ラマン解析について本来昨年度の研究予定であったが、岡山大学工学部の施設での解析となる為、新型コロナ感染症対策のため研究者らの判断にて自粛していた。本年度の新型コロナウイルスの感染症の状況を慎重に判断して再開していく。 (2)T細胞とMRONJの関連に関する研究;ゾレドロネート投与により末梢血中のヘルパーT細胞が増加、細胞障害性T細胞が減少していることを確認したが、T細胞の動態から得られる結果はMRONJの病態解明につながると考えられた。本研究ではゾレドロネート投与マウスから末梢血、脾臓、胸腺を摘出し、抗CD3抗体にてT細胞を活性化することにより、血球系細胞に与える影響をFACSにて解明する。さらに変動する血球系細胞に起因するサイトカインをターゲットとして血清タンパクのELISA解析を行う。
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