研究実績の概要 |
これまでの研究で、ゾレドロネート投与は、ミネラル/マトリックス比を有意に増加させ、過剰な石灰化を示すことがわかった。さらに結晶化度を低下させ結晶格子の配列に関与し、結晶構造の完全性を低下または結晶の成熟を妨げる可能性を示した。ゾレドロネート投与によりプロテオグリカン含有率が低下しており新生骨においてアパタイト形成に適した環境を誘導する一方で 、コラーゲン構造の完全性(collagen structural integrity)は減少することがわかった。 免疫系細胞の解析では、ゾレドロネート投与群において大腿骨骨髄でT細胞の数が減少し、末梢血中のヘルパーT細胞が増加、細胞障害性T細胞が減少しているものと思われた。 本年度改めて、ゾレドロネート投与群において大腿骨髄中のT細胞の減少を確認する一方、以前確認した末梢血中でヘルパーT細胞が増加し、細胞障害性T細胞が減少する現象の精査を行った。その結果ゾレドロネート投与により末梢血T細胞の減少、胸腺DP細胞、DN細胞の増加、CD4SP細胞、CD8SP細胞の減少を確認した。これらは、ゾレドロネート投与群において細胞性免疫が抑制されている可能性を示唆した。 さらに、ゾレドロネート投与群において末梢血中B細胞の増加とγδT細胞の減少を認め、RT-PCRからはWnt10の発現が亢進するすることがわかった。血清サイトカイン解析からはIL-6, IFN-gamma, TNF-alphaが増加しており、これらのことよりゾレドロネート投与により過剰な炎症反応が遷延化する可能性が示唆された。 ゾレドロネート投与にて、新生骨では結晶構造が未熟なまま過剰な石灰化を示す骨が形成されることがわかったが、同時に免疫応答の調整が乱れ、炎症の増悪・遷延化を来しやすい環境がつくられていると考えられる。これらの結果は顎骨壊死の病態解明に有効と思われた。
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