研究課題
本研究では口腔癌患者から採取した細胞から無血清培地を用いてフィーダー細胞を使用せずiPS細胞を樹立・維持し、完全無血清培養系での癌細胞に対する細胞障害活性の高い活性化リンパ球誘導・増殖させ、口腔癌治療の免疫細胞治療への応用を目指すことを目的とし、以下のとおり実施した。1.インテグレーションフリー・無フィーダー・無血清培養条件での末梢血単核細胞(PBMC)由来hiPS細胞の誘導法効率化:口腔癌患者から採取したPBMCを、無血清培地RD6FにIL-2を添加した培地にて初代培養を行い、増殖した活性化リンパ球にセンダイウイルスベクターSeVdpを用いて初期化4遺伝子を導入し、本研究室で開発したhESF9培地を用いてlaminin-E8上に播種しPBMC由来hiPS細胞を複数クローン樹立した。2.PBMC由来hiPS細胞の未分化性の評価:上記方法にて誘導されたPBMC由来hiPS細胞各クローンにおける未分化マーカー遺伝子および蛋白発現をRT-PCR法および蛍光免疫染色法にて検討した。3.PBMC由来hiPS細胞の分化多能性の評価:PBMC由来hiPS細胞の各クローンにおける分化多能性をin vitroおよびin vivoにて評価した。4.口腔癌患者PBMC由来hiPS細胞のセルバンク化:樹立したhiPS細胞を気相窒素タンクに保存し、口腔癌患者由来iPS細胞の供給および活性化リンパ球への誘導ソースとして、凍結保存・細胞バンキングなどを行っている。
2: おおむね順調に進展している
口腔癌患者から採取した末梢血単核細胞(PBMC)を、無血清培地にて初代培養を行い、増殖した活性化リンパ球にセンダイウイルスベクターSeVdpを用いて初期化し、インテグレーションフリー・無フィーダー・無血清培養条件でPBMC由来ヒトiPS細胞の誘導方法を確立し、口腔癌患者由来血液細胞から簡便にiPS細胞の樹立・維持が可能となった。また同培養方法を用いて、口腔癌患者PBMC由来hiPSCのセルバンク化を推進している。
口腔癌患者由来血液細胞からインテグレーションフリー・無フィーダー・無血清培養条件で誘導したPBMC由来hiPS細胞を用いて、PBMC由来hiPS細胞の活性化リンパ球への分化誘導法の検討を引き続き行う。胚様体形成法を用いフィーダー細胞フリー無血清培養系で造血前駆細胞を分化誘導し,それら細胞から活性化リンパ球への分化誘導を行う。さらに、分化誘導された活性化リンパ球の細胞傷害活性についてin vivoおよびin vitroでの評価を行う
(理由)樹立したPBMC由来hiPS細胞の活性化リンパ球への分化誘導法を検討するため、Embryoid Body形成法を用いてPBMC由来hiPS細胞から無血清培養系で造血前駆細胞の分化誘導を試みているが、代表者の出産に伴う産前産後休暇ならびに育児休暇取得による研究中断のため、本年度使用額に残額が生じ次年度使用額が生じた。(使用計画)今後は育児休暇より復帰後より次年度繰越額を用いて、造血前駆細胞および造血前駆細胞の活性化リンパ球への分化誘導法の検討、hiPS細胞由来活性化リンパ球の細胞障害活性の検討を行う予定である。
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